ゆったりとした自然に囲まれた山口県防府市・国衙。平安の昔、この地は「周防の国」と呼ばれ、国衙遺跡や当時の地名をいまもとどめている。
この物語の主人公は、この町の旧家に住み、毎日を明るく楽しく過ごす小学3年生の少女・新子だ。おでこにマイマイ(つむじ)を持つ彼女は、おじいちゃんから聞かされた千年前のこの町の姿や、そこに生きた人々の様子に、いつも想いを馳せている。彼女は“想う力(ちから)”を存分に羽ばたかせ、さまざまな空想に胸をふくらます女の子であり、だからこそ平安時代の小さなお姫様のやんちゃな生活までも、まるで目の前の光景のようにいきいきと思い起こすことができるのだ。
そんなある日、東京から転校生・貴伊子がやってきた。都会とは大きく異なる田舎の生活になかなかなじめない貴伊子だが、好奇心旺盛な新子は興味を抱き、お互いの家を行き来するうち、いつしかふたりは仲良くなっていく。一緒に遊ぶようになった新子と貴伊子は同級生のシゲルや、タツヨシたちとともに、夢中になってダム池を作る。そして、そこにやってきた赤い金魚に、大好きな先生と同じ「ひづる」と名前をつけ、大切に可愛がるようになる。やがて新子たちは、学校が終わるとこのダム池に集まって過ごすようになっていた。
しかし、ふとしたことから「ひづる」が死んでしまい、それを機に仲間たちとの絆も揺らぎ始めていく。そんななか、新子は「ひづる」そっくりの金魚を川で見かけたという話を聞き、貴伊子や仲間たちと金魚探しを始めるのだった。そして、みんなの心が再びひとつになりかけたその時……。
新着映画情報
(声の出演) |
監督:片渕須直
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2009/日本/93分 |
想像の翼をぐんぐん広げ、千年前の町の姿やそこに生きる少女まで思い描く。 そんな少女・新子が、転校生・貴伊子や仲間とともに過ごす、楽しくも切ない季節。
原作は、本年、紫綬褒章を受章した芥川賞作家・高樹のぶ子が、自らの幼少時代をモデルに描いた自伝的小説『マイマイ新子』。小説の中でいきいきと描かれた昭和30年代の山口県防府の風景が、美しい映像となってよみがえる。ここを舞台に、空想好きで多感な少女・新子が豊かな自然のなかで毎日を真剣に生き、時にヒリヒリとした苦い思いをしながら、仲間たちとゆっくり成長していく姿が描かれる。
(c)2009 高樹のぶ子・マガジンハウス / 「マイマイ新子」製作委員会