「獲物、見っけ」
深夜の路上を徘徊する乗用車に、引きずり込まれる少女の悲鳴が、闇に吸い込まれていく――翌朝、荒川べりで、無残な制服姿の死体が発見される。事件現場に駆け付けた刑事、織部孝史と真野信一は、死体に強姦と薬物注射の痕跡があることを知る。少女の身元が判明、長峰重樹の中学生になる一人娘・絵摩であった。連絡を受けた長峰が、遺体安置室で変わり果てた娘と対面する。憔悴、落胆、遣り切れない無念。妻を亡くし、娘の成長だけを楽しみに生きていた長峰は、生きる目的すら失って失意のどん底へと突き落とされた。絶望と無気力の日々。その彼の家の留守電に、謎の人物からメッセージが入る。
「絵摩さんはスガノカイジとトモザキアツヤに殺されました。トモザキの住所は・・・」
警察から捜査の進展状況も知らされず、苛立ちを覚えていた長峰は、疑念を抱きながらも、伴崎のアパートを訪れる。主が不在の部屋で長峰が見つけたビデオテープには、絵摩を力ずくでレイプする、人間の姿をした怪物、伴崎と菅野の姿が映し出されていた。この世に、こんなにまでの理不尽な不幸、無慈悲な悪があるのだろうか。激しい慟哭と怒りに駆られた長峰は、やがて帰宅した伴崎の腹部に、その場にあった刃物を突き立てた。「菅野はどこだ・・・」、姿を消す長峰。
やがて、捜査本部の織部と真野の元に、長峰から、伴崎殺しを自供する手紙が届き、現場から発見された指紋から、長峰の犯行と断定される。長峰の手紙には、未成年者ゆえに与えられる刑罰の軽さを憂い、自分はどうしても彼らを許せないと心のうちが書き綴られていた。長峰の心情に同情以上の何かを感じた織部は、真野に激しく詰問する。「結局、われわれ警察がしていることは、菅野のような者に更生するチャンスを与え、長峰さんのような被害者の未来を奪い取っているだけじゃないんですか」、「長峰にはもう未来なんてないんだよ」真野の一言はこの上なく重く、織部の心に響く。
伴崎殺しの犯人として全国に指名手配されたころ、長峰は長野の山中にいた。伴崎が口にした「長野のペンション」という一言を頼りに、菅野の後を追っていたのだ。菅野の写真を見せ、一軒一軒尋ね回りながら、やがて廃屋と化した一軒のペンション跡に辿り着く長峰。一方、伴崎のアパートから出た証拠品のビデオテープの映像から、織部と真野も菅野の潜伏先を長野に絞り込み、同じ廃屋へと向っていた。
新着映画情報
寺尾聰 |
監督・脚本:益子昌一 |
2009/日本/ |
父親は犯人を追う。刑事は父親を守りたかったー。 東野圭吾ベストセラー小説の映画化。
最愛の人が奪われたとき、あなたはどうしますか? 最愛の娘が、少年達によって、凌辱され殺された。ある日、謎の密告電話により、失意のどん底に落ちていた父親・長峰重樹(寺尾聰)は、犯人を知ることになる。「我が国の法律では未成年者に極刑は望めない!」復讐が何も解決しない虚しい行為だと分かっていながら、父親は自ら犯人を追うー。
そして、長峰を追う2人の刑事、織部孝史(竹野内豊)と真野信一(伊東四朗)。被害者の絶望は、永遠に消えない。そして、少年達は犯した罪と同等の刑を受けることはない。法律を守る、という建前の正義を優先する警察組織に、割り切れなさを感じる刑事達。
それぞれが苦悩しながら、この事件は予想外の結末を迎えるー。
原作はベストセラー作家・東野圭吾の『さまよう刃』。少年法と被害者感情の乖離など社会に対する問題提起が話題となり、現在までに150万部を越すベストセラー記録を樹立。
監督・脚本は「ひまわり」「きょうのできごと」など数多くの行定勲監督作品のプロデューサーであり、脚本家としても知られる益子昌一。
(c)2009『さまよう刃』製作委員会