行方不明だった少女が、10年後、帰ってきた。ある遊園地の”巨大な廃病院”の姿をしたお化け屋敷から。
丹波刑事は、取調室にじっと座っている青年をマジックミラー越しに見つめながら、疑惑の念を抱いていた。「なんてこった・・・」、手元のカルテを眺めながらそうつぶやいた。
その朝、事件が起きたという”遊園地”に駆けつけると、すでに現場の外には3人の死体が並んでいた。そして、警官に取り押さえながら、青年は建物から出てきた。何度も振り向きながら「もう一人、もう一人、中にいるんだ!」と、叫ぶ青年。
そのアトラクションはかなり広く、2階建てでありながら、中間に位置するフロアもあり、複雑に入り乱れ、短時間では把握できない設計が施されていた。被害者の一人は”救命病棟”入口の救急車の近くに、もう一人はその脇の螺旋階段下に。最後に発見された死体は、ボイラー室に通じる廊下にあった。入場者を怖がらせるために作られたアトラクションなのだが、実にリアルに病院を模っている。さらに随所に不気味な人形や仕掛けが溢れ、作り物の血痕までもが至る所に付着していて、現場検証は難航した。そんな時、3人の死体のうち、一体の生存が確認され、一気に現場の緊張が高まった。
「ユキが帰ってきた。僕たちを連れて行ったんです・・・」ユキ? 取り調べが進む中、青年は4人に共通する10年前の事件について語りだした・・・。