寒風吹きすさぶ真冬のデトロイト。最愛の妻に先立たれたデトロイト警察のベテラン刑事ブレスリンのもとに、殺人事件発生の知らせが届く。郊外の現場を訪れたブレスリンが目のあたりにしたのは奇妙な光景だった。死体はどこにもなく、凍りついた池の上にぽつんと設置された銀のトレーに、被害者の口から抜かれた大量の歯だけが置かれていたのだ。池を取り囲む四方の木には、鮮血のような赤いペンキで「来たれ」という謎のメッセージが記されている。ブレスリンが管轄外の現場に呼び出されたのは、彼が歯科法医学の権威だからだった。現場から持ち帰った歯を分析した彼は、ペンチのようなもので抜かれたそれらが30代前半の男性のもので、被害者はまだ生きている可能性があると指摘する。
まもなく第二の事件が起こった。メリー・アン・スピッツという中年女性が、自宅の2階で何者かに殺されたのだ。部屋に足を踏み入れたブレスリンは、「来たれ」と壁に赤い文字が書かれた現場の凄惨さに息を飲む。メリー・アンの全裸死体は極太の釣り針とワイヤーによって怪しげな器具に吊られており、それはまるで倒錯的なアートの展示物のようだった。すでに死後12時間経ったメリー・アンは、生きたまま薬物を打たれて宙吊りにされ、しかも・・・。死体発見者はメリー・アンとその夫スピッツ氏の養女である東洋系の美少女クリスティン。大粒の涙をこぼしながら「犯人を捕まえてくださる?」と訴える彼女を哀れんだブレスリンは、何かあったら連絡するようにと名刺を渡す。
そして、二人目、三人目の犠牲者が・・・。
まもなく謎だらけの事件は衝撃的な急展開を見せる。ブレスリンを呼び出したクリスティンが、自らメリー・アンを殺害したことを告白したのだ。彼女が不気味な笑みを浮かべて取り出したビニール袋に入っていたものは、まさに犯行の動かぬ証拠だった。恵まれない子供たちの施設で育ち、家族の愛に飢えていたはずのクリスティンが、なぜ異常極まりない凶行を犯したのか。警察の取調室で向き合った彼女は、もはや清らかで健気な美少女ではなかった。邪悪な本性を露わにしたクリスティンは、自分と共犯者たちの猟奇連続殺人はこの先も続くことを示唆するのだった・・・。