孫文44歳、いまだ冬の時代。 暗殺者の影。彼を愛で支える女性たち。 革命への理想は、苦境にあるときこそ輝きを増していた・・・。
1910年、孫文は9回目の武装決起に失敗し、国外での逃亡生活を余儀なくされていた。清朝政府は70万両の白銀を懸賞金にして、彼の命を狙う。やむなく孫文は革命地盤の日本を脱出し、清朝政府の手の届かないマレーシア・ペナンへと向かう。
船上で、孫文はペナンで教師をしているというルゥオ・ジャオリンという青年に出会う。ジャオリンは「困ったことがあったら言ってほしい」と、孫文に名刺を渡す。ペナンへ到着した孫文は、裏でアヘン業を営む富豪華僑シュー家に身を寄せることになる。シュー家の頭領シュー・ボウホンは孫文を同国人として歓迎するが、「ここでの革命活動はやめるように」と言い渡す。華僑たちは、失敗続きの孫文の革命を信用できなくなっていた。孫文は、シュー家でジャオリンに再会する。ジャオリンはボウホンの娘、ダンロンの恋人だったが、実はそれは表向きの姿にすぎなかった。ジャオリンの本当の正体は、孫文暗殺の密命を受けた清朝の密偵だった。ジャオリンは孫文がシュー家に滞在している間に暗殺を目論むが、ダンロンが孫文に興味を持ち何かと接近するため、なかなか実行に移せない。
資金調達が適わないと知った孫文は、シュー家を離れ、ペナン同盟会のホワンを訪ねる。そこには、10年来孫文の革命を支え続けてきた女性同志、チェン・ツイフェンも駆けつけてきていた。孫文はツイフェンとの再会を喜ぶが、ツイフェンは南洋での逃亡生活に複雑な思いを抱えていた。ツイフェンは孫文との穏かな生活を夢見ていたのだが、同時に、革命に生きる孫文に穏かな日々はありえないと悟ってもいた。
ある日、孫文は港で不当な扱いを受けていた中国人労働者を助ける。孫文は労働者にも権利があることを諭し、彼等のために弁舌を振るう。孫文の交渉により、永きに亘る港での労働者と雇用者の対立は解決した。労働者から「中国のために」という心からの献金を受けた孫文は、再び革命への心を奮い立たせる。しかし・・・肝心の富豪華僑たちの心は動かず、孫文の資金集めは危機に瀕していた。孫文の一連の行動に心惹かれたダンロンは、富豪たちが集まるシュー家のパーティーに孫文を招待することを決める。それを知ったジャオリンはパーティーでの孫文暗殺を画策する。
暗殺者に狙われていることを知りつつ、孫文は資金調達のために、パーティーに参加する。だが富豪たちの態度は冷ややかだった。暗殺者の動きに気づいたツイフェンは孫文の救出に向かうが、何も知らずに後を追ってきたダンロンが銃撃戦に巻き込まれてしまう。ダンロンが傷ついたことを知ったジャオリンは動揺し、思わず孫文たちの逃走に力を貸してしまう。ダンロンは孫文の手当てを受け回復するが、ジャオリンはすぐ側にいながら孫文を殺せなかった自分に困惑する。孫文の死さえ恐れない不屈の革命精神は、ダンロンだけでなく、ジャオリンの心にも影響を与え始めていた・・・。