時に1575年(天正3年)、長篠の戦いで甲斐の武田勢を破った織田信長は、翌1576年(天正4年)、その天下統一事業を象徴するかのごとき巨城を、琵琶湖を臨む安土の地に建築することを決意。設計及び現場の総棟梁として、今川義元との戦以来、十数年に渡って才気を評価してきた熱田の宮大工・岡部又右衛門を任命する。「安土の山をまるごとひとつ、三年で城にせよ。」
信長から直々の厳命を受け、後に行われた指図(図面)争いにおいても、金閣寺を建立した京の池上家、奈良の大仏殿建造を担った中井一門を破った又右衛門は、妻・田鶴や娘・凛、門下の大工たちの支えを得ながら、徐々に築城を進めていく。しかし、巨大な城を支えるためにはその主柱(大通し柱)に、これまでになく巨大な檜が必要であった。理想の木材は木曽上松にあると踏んだ又右衛門は、意を決して信長の敵方・武田勝頼の領国に危険を顧みず分け入っていく。
一方、安土の作事場では新たな戦乱の暗雲が立ちこめ、又右衛門の帰還を待つ大工たちに戦地への出立を余儀なくさせる。さらに妻の田鶴にも病魔が迫っていた。やがて勃発する悲劇的な争い、仲間の死。果たして、又右衛門は信長の野心を現実のものにすることができるのだろうか・・・。
新着映画情報
西田敏行 |
監督:田中光敏 |
2009/日本/139分 |
信長の厳命、下る。「山ひとつ、まるごと城にせよ!」
波乱の戦国時代、破壊が渦巻く只中に、かくも豊かな創造のドラマがあった!
総工費1000億円! 希代の戦国武将・織田信長の威光と開明を象徴した前代未聞の城郭要塞・安土城。その建立の陰には、知られざる名工の姿があった!
直木賞作家・山本兼一が第11回松本清張賞を受賞した同名歴史小説『火天の城』(文藝春秋刊)を完全映画化。今なお伝説的に語り継がれる巨城は、いかなる経緯で戦国の世にそびえ立ったのか。これは、ひとりの宮大工が直面する様々な苦難、障害を乗り越え、己の信念と家族の支えによって、ついに築城の偉業を果たすまでを描いた一大歴史スペクタクルである。これまで史実の表舞台に出ることがなかった宮大工・岡部又右衛門を正面から描き、安土城築城の実態に迫った物語は、まさに「戦国時代のプロジェクトX」と呼ぶべき人物発見、歴史再発見の旅そのもの。破壊と殺戮に煙る戦国時代に、かくも豊かな創造のドラマがあった。“木組みは心組み”というもの作りの精神を、職人とその門下生に託しつつ、同時に名もなき女性たちの想いも織り込んだ物語は、15億円もの巨費を投じた築城のスペクタクルと相まって、感動の涙を誘うだろう。
(C)2009「火天の城」製作委員会