1983年、アメリカ。ニューヨークの街に、衝撃が走ったー
郵便局員が、窓口に切手を買いに来ただけの男を、顔を見るなり突然射殺する。犯人の局員は前科もなければ借金もない。精神状態も良好で、25年間仲睦まじく暮らした妻は病気で亡くなり、定年退職の3ヶ月前だった。 さらに不可解なことに、局員の部屋から彫像の頭部が発見される。それは、イタリア、フィレンツェのサンタ・トリニータ橋を飾る“プリマヴェーラ”で、歴史的に大変貴重な作品だった。1944年にナチスが橋を爆破した時から行方不明になっていたのだ。 いったい郵便局員と男の間に何があったのか?なぜ、闇市場に出せば500万ドルはするという美術品が、局員のクローゼットの中に眠っていたのか? すべての謎を解く鍵は、彫像が消えた1944年のイタリアにあった...。
1944年、イタリア。トスカーナの村に、奇跡が起きたー
第2次世界大戦の真っ只中、郵便局員は兵士としてトスカーナで戦っていた。彼が所属するのは第92歩兵師団、バッファロー・ソルジャー。アメリカが過酷な最前線に送り込む、黒人だけの部隊だ。ナチスが待ち受ける中、偵察隊として彼を含む4人の黒人兵が川を渡ることに成功するが、その中の1人が爆撃に倒れた少年を助けたことから、彼らはそのまま部隊とはぐれてしまう。少年を見殺しにできなかった心優しい兵士の名はトレイン。フィレンツェで拾った彫像の頭をお守り代わりに持ち歩いている。少年が足手まといだと怒るのは、いつも自分勝手なビショップ。無線兵のヘクターはイタリア語が堪能で、首からさげた十字架にキスをするのが習慣の信心深い男。彼らをまとめるリーダーが、知性溢れるスタンプスだ。少年は初めて見る黒人のトレインを“チョコレートの巨人”と呼び、彼にはすぐに心を開いた。大きな体に純粋な魂を宿すトレインは、少年には何か神秘的な力があると信じるのだった。
4人の黒人兵は少年の治療と食料を求めて、村を守るという言い伝えのある〈眠る男〉の山のふもとに辿り着く。彼らはレナータという英語が話せる美しい女とその家族に、強引に世話になる。ケガから回復した少年が"友達”に「助けてあげる?」と話しかけると、壊れていた無線機が急に音を出す。それを見たヘクターも、少年の不思議な力を信じ始めるのだった。
村でのひと時の休息は、思わぬ来客の到来で終わりを告げる。ペッピが率いるパルチザンたちが、食料を求めて山から降りてきたのだ。パルチザンはナチスの兵士を捕虜にしていた。その兵士が、元気な姿の少年を見て涙ながらに喜び、彼を抱き寄せると何事か囁いたー。
トレインに促されて、少年は初めて自分のことをポツリポツリと語り始める。名前はアンジェロ、セントアンナからやって来た。教会でドイツ人と逢い、「全速力で逃げろ」と言われた。彼は友達だが、もう1人の男が怖い...。
実は、セントアンナでは、ナチスによる民間人の大虐殺が起きていた。アンジェロは、その汚れなき瞳でいったい何を見てしまったのかー? そして、裏切り者がいたのか、村にはナチスの大軍が押し寄せてきたー。
新着映画情報
『セントアンナの奇跡』
配 給 : | ショウゲート |
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公式HP: | 別ウィンドウで公式HPを表示 |
公開日: | 2009年07月25日 |
映画館: | TOHOシネマズ シャンテ、テアトルタイムズスクエアほか全国ロードショー |
デレク・ルーク |
監督:スパイク・リー |
2008/アメリカ・イタリア/シネマスコープ/ドルビーデジタル/160分 |
現代、ニューヨーク...郵便局殺人事件。 1944年、フィレンツェ...消えた彫像事件。 2大陸、2つの時代を結ぶ謎が今、明かされるー。 実話から生まれた<奇跡>の物語
「CHANGE」するアメリカと共に歩む、スパイク・リー監督が、最新作で取り上げたのは、第2次世界大戦時に実在した黒人だけの部隊、第92歩兵師団“バッファロー・ソルジャー”。彼らが送り込まれた最前線、イタリアのトスカーナには、封印された残酷な史実があった。1944年8月12日、ナチスが罪のない大勢のイタリア市民を殺害した“セントアンナの大虐殺”(注)だ。 戦場を舞台にした初めての作品となる本作で、スパイク・リー監督の視点に、明らかな変化が見られる。そこに描かれるのは、黒人と白人の対立関係ではなく、戦争を支持する者と、しない者の対立。人の命が奪われることに涙する者たちの想いが、一つになる姿だ。
原作は、叔父がかつてバッファロー・ソルジャーの一員だったという、ジェイムズ・マクブライドの「Miracle at St. Anna」。幼い頃に聞かされた叔父の話を思い出し、現地で徹底的に調査すると共に、自身のイマジネーションを駆使してこれを書き上げた。2003年に出版されたこの小説に即座に熱狂したスパイク・リー監督は、マクブライドに映画化と共に脚本も依頼、そこからさらに数年をかけて、壮大なスケールの感動ドラマが完成した。
(注)イタリアのサンタンナ・ディ・スタッツェーマ市で起きた事件。アメリカでは"セントアンナの大虐殺”で知られ、"サンタンナ”を"セントアンナ”と発音している。