ハルは、イラストレーターの”卵”で、いつもは古本屋でアルバイトをしている。恋愛話ばかり報告してくれる同僚の真由子、寡黙なご主人と、ちょっと口うるさい奥さん。子供のいない主人夫婦に飼われた猫のチビトム。よく道端でバッタリ会ってしまう古本屋のお客である鈴木さん。ハルは、バイトが終れば、お寺の境内に駆けつけて、師匠の猫仙人と一緒に飽かず集まってくる猫たちを眺める。猫を追いかけ、古本屋でバイトをするハルのゆるやかな日々。
ある日、ハルが住む共同廊下のアパートに、今では福島にいる元カレ健吾から林檎が届く。そこには、故郷で結婚するという手紙が入っていた。
そんな時、一冊の赤い本を見つけて、古本屋のご主人の本を整理する手が止まるー。「男から贈り物をもらう。結婚を約束していた男だよ。でも、結局、女は他の男と結婚してしまう。そして、男がくれた贈り物をどうしようかと考える。手元にとっておくのは気持ちの上で重荷なんだろうか?」 ご主人は、ハルに問いかける。その赤い本は、実は昔、ご主人がかつての恋人に贈った詩集だったのだが、それがどんな巡り合わせなのか、贈り主のご主人のもとに戻って来たのだ。そのことで、ご主人と奥さんの間が、ちょっとギクシャクし始める。
そして、ある日、チビトムは姿を消してしまい、奥さんも「あんたなんて、本だけ読んで、生きていけばいいじゃない!」とご主人に言い残し、姿を消してしまう。ハルは、チビトムが戻ってくれば、きっと奥さんも戻ってくると思い、チビトムを探すのだったー。
猫には、飼い主にも見せない“空白の時間”がある。わたしにも、あなたが知らない時間があって、あなたにも、わたしが知らない時間ある。それは追っても追っても知ることの出来ない時間なのかもしれない。
新着映画情報
星野真里 |
監督:鈴木卓爾 |
2009/日本/スタンダード/103分/HD作品 |
原作は、猫好きたちの圧倒的な支持を得た浅生ハルミンの『私は猫ストーカー』。 猫を追いかけて町を行けば、猫を取り巻く人々の“心情”も見えてくる。
もともと猫好きたちは、猫と遊ぶのも好きだが、猫を“見る”のも、猫と“出会う”のも好きなのかもしれない。原作『私は猫ストーカー』(洋泉社刊)は、古本に心を躍らせ、「猫は昼間、なにげに家から出てゆくが、いったいあれはどこへ行ってるのだろう」と猫の後をおいかけるイラストレーター・浅生ハルミンが書いたエッセイ集。猫好きたちの圧倒的な支持を得て、続編である『帰って来た猫ストーカー』(洋泉社刊)も刊行された。映画『私は猫ストーカー』は、そんな浅生ハルミンのエッセイから想を得て、猫ストーカーでありイラストレーターの卵である“ハル”の日々を描いたオリジナルストーリー。
(c)2009 浅生ハルミン/『私は猫ストーカー』製作委員会