世嘉冨(ゆがふ)島の森の奥にある大木の上に、島を祝福する守り神・精霊(キジムン)たちが三線を弾きながら口説(クドゥチ)(物語歌)を歌っている。マジルーは、キジムンの王タンメーに聞く。
「人間はなぜ、すぐになんでも忘れてしまうんだ?」
「それは、忘れないと生きていけないからだろう。人間は我らと違って悲しむ生き物だからな」
「哀れだな、人間は。その人間に忘れられたら生きられない、我らキジムンは、哀れを通り越して滑稽だ」
ゆり子は、東京での恋に疲れて、沖縄の故郷、世嘉冨島に帰って来た。大きなさんかく山がそびえ、燃えるような緑豊かな島。そこは幼い頃、カマドおばあと暮らした懐かしい場所だ。ところが、近頃は、島を出る家がたくさんあって、マジルーたちも淋しがっていたのだ。
島は、折しも村長の息子の結婚式を目前にひかえ、数少ない島の青年会の面々は、結婚式でお披露目する芝居「大琉球王国由来記」の稽古の真っ最中。演出の昭彦は、やる気満々なのだが、あとの仲間は男だけ。どうも稽古に身が入らない。実は、この結婚は政略結婚。村長は、島のリゾート開発で大儲けを企んでいたのだ。帰って来たのをこれ幸いと、ゆり子は青年会の芝居のヒロインにされてしまう。そこに、ゆり子の不倫の恋人、敦がゆり子を追ってくるわ、その敦を妻の梨花が追いかけてくるわで、小さな島は大騒動!
そんな時、ゆり子はマジルーと再会する。幼い頃、ゆり子は他の人には見ることの出来ないマジルーの姿を見ることができた。
「オレさまと話ができる人間に出会ったのは二百年振りだ」
そして、二人は永遠の友情を結んだのだ。
「大人になっても、オレさまを忘れないでいておくれ。オレさまは、いつでもここで待っているから」
でも、この島を離れてから、ゆり子はすっかりマジルーのことを忘れていたのだ。
琉球王朝の末裔の住むこの島を祝福し、ゆり子を見守るのが、マジルーの役目。マジルーは、恋に苦しむゆり子のために一計を案じる。さっそく目を覚まして最初に見たものに恋してしまう“恋の秘薬”を使って大活躍! ところが、村長の馬鹿息子は政略結婚の花嫁に逃げられ、ゆり子は、その身代わりにと村長一味に誘拐されてしまうのだー。
新着映画情報
『真夏の夜の夢』
配 給 : | オフィス・シロウズ、シネカノン、パナリ本舗 |
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公式HP: | 別ウィンドウで公式HPを表示 |
公開日: | 2009年07月25日 |
映画館: | シネカノン有楽町2丁目、シネマート新宿ほか全国ロードショー |
柴本幸 |
監督:中江裕司 |
2009/日本/ヴィスタビジョン/DTSステレオ/105分 |
沖縄の小さな島を舞台に人間と精霊(キジムン)たちが織りなす、“幸福”に満ちた物語。
沖縄を舞台に、「ナビィの恋」(99) 「ホテル・ハイビスカス」(02)で見る人を“幸福”に包んだ中江裕司監督の新作。 ウイリアム・シェイクスピアの遊び心溢れる祝祭劇『真夏の夜の夢』を大胆にアレンジ。舞台を沖縄の小さな島に移して、人間と島の守り神・精霊(キジムン)たちがが織りなす“幸福”に満ちた物語。
(c)2009 「真夏の夜の夢」パートナーズ