北極では氷原が減少し、 ベラルーシの森林には開発が迫る。 そしてベルリンでは育児放棄されたクヌートが・・・
冬の寒さはマイナス40℃にもなる北極。地球上で最大の肉食獣・ホッキョクグマは、この過酷な自然の中で生まれ、長い一生を過ごす。先住民族のイヌイットは、ホッキョクグマをこう呼んだー「偉大なる孤独な放浪者」。
北極では数週間前、1頭の母グマが三つ子を産んだ。ホッキョクグマに三つ子が生まれるのは珍しく、これから3ヶ月の間、母親は一切、エサを食べることなく、子育てに専念する。やがて巣穴を出た彼らは、エサを求めて60キロも離れた海を目指すが、もともと体の弱かった1頭は厳しい自然に絶えられず、命を落としてしまう。
一方、北極から遠く離れたベルリン動物園でも、ホッキョクグマの赤ちゃんが2頭、誕生する。しかし、母グマは育児放棄し、1頭は生後わずか4日後に息を引き取った。残された1頭は「クヌート」と名づけられ、飼育係のトーマス・デルフラインの手によって育てられることに。ホッキョクグマの人工哺育は、トーマスにとっても、ベルリン動物園にとっても初めての体験だ。2時間置きにミルクを与え、排便を促し、体を洗ってやるトーマス。クヌートはそんな彼を本物の母親だと思っているのか、ヒグマやホッキョクグマの子供が安心しているときに出す“笹泣き”をし、子グマらしい腕白ぶりを発揮する。
そして、ロシア・ベラルーシの森にも母親のいない双子のヒグマがいた。生後5か月の彼らは母親が数日前に命を落としたことも知らず、母親の帰りを待っている。母グマは人間に撃たれてしまったのだ。2頭は本能と母から教わったわずかな知識を頼りにエサを探すが、まだ幼い彼らに腹を空かせた野生のオオカミが襲いかかる。
その頃、ベルリン動物園では、クヌートが初めて外に出されることに。なかなか外に出ようとしないクヌートに対し、優しく声をかけるトーマス。やがてお披露目の日を迎え、500人もの報道陣と数千人のファンが世界中から押し寄せ、クヌートはたちまち動物園の人気者になる。さらに地球温暖化で絶滅の危機にさらされているホッキョクグマの仲間を救うため、クヌートは環境保護大使にも任命されるが、その一方で、「親グマが放棄した子グマを人間が育てるのは、動物保護の考えに反する。人工哺育は止めて、クヌートを安楽死させるべきだ」という記事が出たことで、ドイツ国内外を巻き込んで大論争が起こる。
北極、ベルリン、ベラルーシ―3つの環境で懸命に生きるクマたちに待ち受ける厳しい試練と運命とは?