愛した息子の影を追いかけて日本へやってきたひとりの男。 愛した男性を想いながら孤独に暮らすひとりの女。 どんな人の心にもある誤解、偏見、憎しみ、そして愛...。
サンフランシスコに住む写真家ダニエル・ホルダーには、愛してやまない一人息子ミッキーがいた。しかし息子はアメリカを飛び出し、日本の高知県のとある町に英語教師として赴任、画家としての才能も発揮していた。その順調な生活も束の間、1年もたたずにミッキーは交通事故に遭い亡くなってしまう。
悲しみに暮れるダニエル。彼の父もまた太平洋戦争で命を落としていた。戦争で父親を日本兵に殺され、息子も日本で亡くなってしまった―。日本への抑えきれない嫌悪感と偏見を抱えつつも、自らを奮い立たせ、息子が遺した絵をかき集める決意で単身日本に向かった。
ダニエルは訪れた高知で、ミッキーを弟のようにかわいがっていた原先生や、かつての上司、同僚に思いのほか温かく迎えられる。意外なまでに高知の人々に愛されていた息子の生活を目の当たりにし、激しく戸惑う。そんなある日、訪れた中学校の竹内先生に、息子の教え子であった知的障害を持つ少女を紹介され、プレゼントされた絵から思いがけない事実を知る。ミッキーが同僚の紀子と結婚していたこと、そしてふたりの間に生まれていた、新しい命の存在を―。