山あいの小さな村から一人の医師が失踪した。警察がやってきて捜査が始まるが、驚いたことに、村人は自分たちが唯一の医師として慕ってきたその男についてはっきりした素性を何一つ知らなかった。やがて経歴はおろか出身地さえ曖昧なその医師、伊野の不可解な行動が浮かび上がってくる...。
遡ること2ヶ月前ー。東京の医大を卒業した相馬は、研修医としてその村に赴任してきた。コンビニ一つなく、住民の半分は高齢者という過疎の地。そこで相馬は、伊野という腰の据わった勤務医と出会う。日々の診察、薬の処方からボランティアの訪問健康診断まで、村でただ一人の医者として、彼はすべてを一手に引き受けていた。診療所に住み込み、急患が出れば真夜中でも飛んでくる伊野のことを、村人は「神さま仏さま」よりも頼りにしている。僻地の厳しい現実に最初は戸惑っていた相馬も、村中から親しげに「先生」と呼びかけられる伊野の献身的な働きぶりに共感を覚えるようになっていく。
ある日、かづ子という一人暮らしの未亡人が倒れた。彼女は、自分の体がもう大分良くないことに気づいている。「先生、一緒に嘘、ついてくださいよ」。やがて伊野がかづ子の嘘を引き受けたとき、伊野自身がひた隠しにしてきたある嘘も浮かび上がってくる。ずっと言うことができずにいた一つの嘘が。
新着映画情報
『ディア・ドクター』
配 給 : | エンジンフイルム/アスミック・エース |
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公式HP: | 別ウィンドウで公式HPを表示 |
公開日: | 2009年06月27日 |
映画館: | シネカノン有楽町1丁目ほか全国ロードショー |
笑福亭鶴瓶 |
原作・脚本・監督:西川美和 |
2008/日本/ヴィスタビジョン/ドルビーSR/127分 |
命の恩人か、ただの嘘つきかー。 若き本格派・西川美和監督による極上の人間ドラマ
柔和な表情の奥に過激なまでなエンターテイナー精神をみなぎらせた「日本で一番顔を知られた男」こと笑福亭鶴瓶が、芸歴37年目にしてついに主役を張った。役は、致命的な秘密を抱えながら生きてきたが、ある出来事をきっかけにのっぴきならない状況へと追い込まれていく僻村の医師。
伊野と好対照をなす都会育ちの研修医・相馬を演じるのは、映画・ドラマに大活躍する瑛太。若さゆえのイノセンスを見事に体現することで物語に繊細な陰影と奥行きを与えている。
原作・脚本・監督のすべてを手がけたのは、異例のロングランを記録した前作「ゆれる」で数々の映画賞を総なめにし、正式出品されたカンヌ国際映画祭でも満場の喝采を浴びるなど、いま日本映画界でもっとも注目されている西川美和。
(c)2009 『Dear Doctor』製作委員会