暗殺成功率100%の男が犯した、1%のミス。
裏社会に生きるジョーは凄腕の暗殺者。ひとつところに留まらず、世界中を転々としている彼は、自身に課した殺しのルールを頑なに守り続け、100%の成功率で仕事をこなしていた。
プラハでの仕事を終え、真の“引き際”を悟った彼は最後の仕事の場所としてバンコックを選ぶ。ギラギラしたネオンが目にまぶしく、欲望と野心が路上に転がっている猥雑な街。4件の暗殺をこなすため、手始めにジョーはいつものように、自分の存在を隠すための現地の使い走りを探す。英語が話せて、金で動き、仕事を終えた後に良心の呵責を覚えることなく消してしまえる人物。雑踏の中で、見つかったその適役コンは、観光客相手に商売をしながらスリを働くケチなチンピラだ。ジョーから彼に与えられた仕事は、依頼主である暗黒街の大物スラットの連絡係をつとめるクラブ・ダンサーのオームから、暗殺司令のスーツケースを受け取ってくること。
最初の標的を片づけたジョーは逃走中に予期せず傷を負い、薬局に駆け込む。そこで出会ったのが、耳の不自由な店員フォン。身振り手振りで薬の用法を説明する彼女に、どんな時でも隙のないジョーは警戒心を解き、思わず笑顔を見せる。
コンが運んできた次なる標的は極悪非道なギャングのボス。しかしコンはジョーとの約束を破り、スーツケースの中身を見てしまった。この場でコンを殺すべきだと判断したジョーは彼にナイフを突き付けるが、その目に映った自分の姿を見て考えを改める。コンの中にかつての自分を感じたジョーは以来、彼を弟子と認め、戦い方を伝授するようになる。それらの“変化”は今までの彼にはありえないものだった。
第2の標的を難なくプールで溺死させたジョーは、コンを連れて第3の暗殺へと向かう。水上マーケットをボートで進み、危険を察して逃げる敵を追い、苦戦の果てに仕留めるジョー。あと1件の仕事で全ては終わる―。
最後の標的は、ひとりの政治家だった。政治的な暗殺は元々の契約には入っておらず、ジョーは躊躇する。自らのポリシーとしても政治的暗殺の全てを断ってきた彼だったが、引退を目前にしているという現実、そして自分の中に目覚めた“変化”が彼の迷いを振り払い、実行に移すことを決意させる。それが全てを狂わせる始まりになるとは知らずに・・・。