「神は7日間で世界を創造した。僕は7秒間で人生を叩き壊した」
そうつぶやく男の名は、ベン・トーマス。過去のある事件により、心に深い傷を抱えて生きている。家族も恋人もなく、たった一人で海辺の瀟洒な家に住んでいるベンは、ある計画を立てていた。
7人の見知らぬ他人を選び出し、自らの正体を明かさずに彼らに近づき、彼らの人生を調べる。そして、ある条件を満たしていれば、彼らの人生が大きく変わる贈り物を渡す。7人の間には何の関係もないが、計画を実行するには、その7人でなければならない特別な理由があった。
「盲目のベジタリアンの、臆病者の販売員め!」
候補者の一人、エズラ・ターナーは盲目のピアニストだが、それだけでは生計を立てられず、ネット販売の会社に勤めている。客を装って苦情の電話をかけたベンは、エズラを口汚く罵る。どこまで耐えられるか、試すかのように。エズラは「さよなら、トーマスさん」と礼儀正しく挨拶して、静かに回線を切る。
「ケン・アンダーソン、ニコル・アンダーソン、アリー・アンダーソン、エド・ライス、スティーブン・フィリップス、モニカ・フリーマン、サラ・ジェンセン」まるで呪文のように、そして自分を鼓舞するかのように、人の名前を連呼するベン。いったい誰の名前なのか?
「うちに泊まった時、オレの物を持ち帰ったか?」
たった一人の肉親である弟からの電話で、そう尋ねられるベン。弟は兄のことが心配でならない。海辺の家の電話線は抜かれて連絡がとれず、やっと携帯電話につながったのに、ベンはすぐに切ろうとする。おまけに兄は弟の家から、何かを勝手に持ち去ったらしい。しかしベンは意味ありげに言う。「オレの物をお前にあげた。覚えているか?オレは、はっきり覚えている」
弟すら知らないベンの計画に係わる人物が、一人だけいる。子供の頃からの親友で、弁護士のダン・モリスだ。ベンに計画の進行具合を聞かれると、「まだ心が決まっていない」とダンは苦しそうに答える。
「私の力で、彼の状況を大きく変えることができる」
別の候補者グッドマンを、彼が経営する病院に訪ねるベン。ベンは国税庁職員を名乗り、骨髄移植に失敗して先の希望が薄く、税金も払えないというグッドマンを調べていた。彼が患者を虐待していると知ったベンは激怒、「あやうく信じるところだったよ。何も与えない」と告げる。資格証で誰もいない深夜の国税庁に入り、税金滞納者を探し出すベン。心臓病を患うエミリー・ポーサは、治療費のために多額の借金を抱え、税金を払えずにいる。ベンは不躾な質問に毅然と答えるエミリーに心を動かされる。彼女はドナーが現れて心臓移植をしなければ長く生きられないのに、人生に希望を失っていなかった。
「こんな頼まれごとは普通じゃない。簡単にできることじゃないんだ」
ベンは、かつて一緒に暮らしていたらしい恋人の思い出の品々を整理すると、海辺の家を出てモーテルに泊まる。持ち込んだ荷物は、従業員の制止を押し切ったクラゲの水槽ぐらいだ。
ダンが作成した書類に、淡々とサインをするベン。ベンに「約束を守れよ」と念を押されたダンは、困難な計画だと嘆く。それでも最後には「まさかオレが、しくじるとでも思うか?心配するな」と請け合うのだが、溢れる涙を抑えることはできなかった。
「私は翼が折れた女よ。でも、あなたは誰?」
夜中に突然、ベンの携帯電話が鳴る。エミリーからだ。彼女は愛犬の散歩中に倒れ、救急車で病院に運ばれていた。エミリーの病室で夜を明かしたベンは、彼女と共に医師の説明を聞く。病状は悪化、余命は1ヶ月、あるいは6週間か...。
エミリーは、辛い時を一緒に過ごしてくれたベンの勇気と優しさに惹かれていく。ベンもまた、捨て去ったはずの人間らしい感情を取り戻し始めるが、エミリーに秘密を打ち明けることはできない。エミリーとの出逢いで、ベンの計画は大きく狂ってしまう。彼の本当の目的は何なのか、そして贈り物の中身とは?