ウクライナ移民のAKの夢は、ミュージシャンとして成功すこと。ジプシーパンクバンド"ゴーゴル・ボルデロ"のフロントマンであり、詩人であり、哲学者でもある彼は、SMの調教師をして生計を立てている。軍人、教師、騎手、マーガレット・サッチャーなど様々なキャラクターに扮装して顧客の歪んだ欲望を満たすこの仕事は、あくまでお金を稼ぐ手段でしかない。とはいえ、AKはプレイの準備と内容をまじめにこなし、時にはルームメイトの2人に手伝ってもらうこともある。
ルームメイトのひとりで、AKが密かに恋心を寄せるホリーは、長年バレエに打ち込んできたが、ロイヤル・バレエ団で踊る日はやって来そうにない。家賃を払えなくなった彼女は、AKの提案により、その「宝物がつまった体」を使って生計を立てることを決意し、ストリップクラブのポールダンサーのオーディションを受ける。渋々飛び込んだポールダンスの世界は想像以上に厳しくかつ深く、ホリーは先輩ダンサーのフランシーヌの指導のもとで練習に没頭していく。そして同時に、男のボスのあしらい方といった仕事のコツもおぼえていくのだった。
もうひとりのルームメイトのジュリエットは、アフリカに渡って恵まれない子供たちを助けることを夢見ている。しかし現実は、近所の薬局のカウンターで働きながら募金活動を行う日々。彼女は時々棚から薬を盗み、旅立つ日に備えている。雇用主であるインド人のサーディープは、彼女への性的好奇心でいっぱいで、薬の瓶が消えていることに気づかない。家に帰れば口うるさい妻とたくさんの子供が待っているサーディープにとって、ジュリエットは現実逃避の対象なのだ。
AK、ホリー、ジュリエットは困った時は協力し合う仲だが、女性ふたりはAKが何かとウクライナの格言を持ち出すことにはうんざりしている。AKの格言を喜んで受け入れるのは、アパートの階下に住む目の不自由なフリン教授ぐらいだ。フリン教授はかつて作家、詩人として名声を得ていたが、視力を失って以来、創作意欲をなくし、世捨て人のような生活をおくっていた。彼のために買い物をして小銭を稼いでいるAKは、ある日、教授の本棚に『ワンダーラスト・キング』と題された彼の著書を見つける。"究極の美女を探し求めて世界中を旅する欲望の王……"。その言葉に触発されたAKは、フリン教授を絶望から救い出し、また彼の才能を音楽を通して伝えようと試みるのだった...。