嫌々ながらも、他人の夢に入るという特殊能力を持ってしまった影沼京一は”悪夢探偵”と呼ばれていた。そんな彼の前に新たな依頼者、女子学生の間城雪絵が現れる。「悪夢を見て眠れないんです。助けてください」。
雪絵の悪夢に登場するのは同級生の菊川夕子。菊川は異様な怖がりで、それを面白がった雪絵は睦美とアキ子を誘い、ちょっとしたイタズラのつもりで彼女を体育倉庫に閉じ込めた。しかしその日から菊川は不登校となり、雪絵の悪夢に姿を現すようになったという。京一は、自分の夢に入ってほしいと頼む雪絵に、「本当に悪いと思うなら、ちゃんと会って謝ればいい」と冷たく突き放す。
そして、最初の事件が起きた。睦美が原因不明の心臓発作で急死したのだ。しかも授業中に居眠りをしたまま隣の机に頭を強打するという異様な死に様だった。「次は私かもしれない...」、パニックに陥った雪絵は再び京一に助けを求める。雪絵は母子家庭で、母親の貴理子は仕事のことで頭が一杯のため、娘の問題に気持ちを向ける余裕がない。雪絵が頼れるのは京一しかいなかった。京一は重い腰を上げ、仕方なく菊川の家へ向かう。
雪絵と出会ってからの京一は、亡き母、逸子のことをしばしば思い出していた。人の心の奥底に潜む悪意までも透けて見えてしまう繊細な心を持った逸子は、自分を取り囲む世界すべてを恐れていた。そしてそんな世界に京一を産み落としてしまったことに罪の意識を感じ、自分と同じように他人の心が見えてしまう京一を恐れてもいたのだ。生きていることそのものが恐ろしい...逸子は周りのものを傷つけ、やがて自分自身を傷つけて命を絶ってしまった。
菊川の家を訪れた京一は、彼女が描いた暗黒の闇を思わせる絵画の数々を目にする。自分を取り巻く世界そのものを怖がる菊川の精神性は、やはり亡き母を思い出させた。しかも追い討ちをかけるように、今度はアキ子急死の知らせが入る。「菊川は母に似ている。いま会わないと、取り返しのつかないことになる気がする」。京一はようやく、雪絵の悪夢に入り込む決意をする。最後に背中を押したのは、自分の存在を拒絶したまま亡くなってしまった母との絆を取り戻そうとする、京一自身の魂の再生への強い意志だった...。
新着映画情報
松田龍平 |
監督:塚本晋也 |
2008/日本/ヴィスタビジョン/ドルビーSR/102分 |
湿り気のあるセピアの夢から浮かび上がるのは、亡き母の哀しい記憶。それは、茫漠とした恐怖に怯える母が、「怖い、怖い...」と、まだ幼かった自分を拒絶する姿。「何がそんなに怖いの?」「お母さんはどうしてボクを怖がるの?」。そんな過去を背負った男は、やがて他人の夢の中に入れる特殊能力をもった”悪夢探偵”と呼ばれる存在になっていく。
2007年、恐るべき破壊力を持つ作品として世界に向けて発表された「悪夢探偵」の続編。しかし、本作はサイコ・サスペンスの構造を持った前作の続きではない。なぜ影沼京一は悪夢探偵となったのか? その秘密に迫る”序章”とも言うべき物語。主人公の影沼京一を演じるのは、前作と同じ松田龍平。
(c)2008 NIGHTMARE DETECTIVE 2 FILM VENTURER