絶対に生きて還る―。絶対に助け出す―。
東京に震度5強の地震があった数日後、海水温度の急激な上昇によって太平洋上に発生した史上最大規模の巨大台風。予測をはるかに上回る自然の猛威が、首都・東京を直撃しようとしていたー。
始まりは、雹の急襲だった。人々でにぎわう銀座の街に、突然、巨大な雹が降りそそぎ、さらに東京湾に押し寄せた高潮が、ビルも、橋も、街路樹も押し流し、都心に向かってなだれ込む。元ハイパーレスキュー隊員の篠原祐司は、その日、7歳になった娘しおりの誕生日を祝うため、妻の由美と銀座で待ち合わせをしていたが、途中の地下鉄新橋駅で逃げ惑う人々のパニックに巻き込まれた由美は、耳の聞こえないしおりとはぐれてしまう。由美からの電話で新橋に向かった祐司だが、その直後、地下へ流れ込んだ大量の水が鉄砲水となって地下鉄を襲い、新橋駅は轟音とともに崩落した!
土砂に埋もれた地下のホームで祐司はようやくしおりを見つけるが、地上への出口は完全にふさがれていた。ときおり瓦礫が崩れ落ちてくる閉ざされた空間に、行き場もなく取り残されたのは5人、祐司としおり、研修医の重村、大阪で中小企業を営む藤井と、銀座で働く韓国人ホステスのスミンだった。
妊娠中の妻と9人の子供のために絶対に死ぬわけにはいかないという藤井、祖国に母を残してきたスミン、投げやりな態度で何かと周囲につっかかる重村も、生きたいという思いに変わりはない。祐司は、しおりを助けるため、そして、ここにいる全員を生きて地上に還すため、救助を求めて行動を起こす。2回、5回、2回、...と、柱を叩き続ける祐司。それは、ハイパーレスキュー隊で使われる「252=生存者あり」の暗号だった。1年前、救出現場でのある出来事をきっかけに、祐司は隊を辞めて転職したが、兄の静馬は今もハイパーレスキュー隊の隊長を務めている。合図を送り続ければ、救助は必ずやってくる。今はそれを信じるしかなかった。
一方、地上では、静馬率いるハイパーレスキュー隊が懸命の救助捜索活動を続けていた。絶望的ともいえる崩落現場。地下への進入口はすべて土砂で埋め尽くされ、瓦礫を掻き分けての危険な捜索にも生存者は一向に見つからない。そこへ追い討ちをかけるように上陸した巨大台風。すさまじい暴風雨が緩みきった地盤を直撃し、いつ二次災害が起きてもおかしくない状況に、捜索の打ち切りが決定された。そのとき、音響探査機シリウスが捕らえた地下からの打音。2、5、2、...ハイパーレスキュー隊の暗号を使って助けを求めている者がいる! 色めきたつ現場に、静馬の声が響き渡った―「252、生存者あり!」暴風雨をついて決死の救出作戦が始まったー。