1938年、戦雲が近づくルーマニア。復活祭の夜に、年老いた一人の男がブカレスト北駅に降り立つ。ピアトラネアムツから来た男の名は、ドミニク・マテイ。最愛の女性ラウラと別れてまで、すべてを捧げた研究も全うできない人生に絶望する言語学者だ。彼は自分のことを誰も知らない場所で、自殺するつもりでいた。ところが突然の雨による落雷に打たれ、目を覚ましたのは病院のベッドの上。即死同然の全身火傷を負いながら、彼は奇跡的に一命をとりとめたのだ。
主治医のスタンチュレスク教授が驚くほどの回復力を発揮し、10週間後にはすっかり健康を取り戻すドミニク。しかも、30〜40代にしか見えないほどに肉体が若返っていた。巨大な電気エネルギーによる体組織の再生、それは同時にドミニクの知的能力を驚異的に増大させ、さらに新しい人格="もう一人の自分"の出現を可能にしていた。ドミニクは教授にだけ真実を一部告白し、架空の身元を作ってもらおうと考える。保安部に目をつけられることを恐れたからだった。
庭に野バラの茂る別の病院に移った彼は、短期間にさまざまな言語をマスターしていく。今や彼の存在はヒトラーの強い関心の的となり、彼を誘惑する女性情報員まで現れる。ゲッベルスの側近であるルードルフ博士が、「百万ボルト以上の電流の感電によって、人は突然変異を起こす」との仮説を立てていたためだ。やがて偽名を手に入れたドミニクはゲシュタポの目を逃れ、スイスのジュネーブに亡命するのだったが...。
新着映画情報
『コッポラの胡蝶の夢』
原題:YOUTH WITHOUT YOUTH
配 給 : | CKエンタテインメント |
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公開日: | 2008年08月30日 |
映画館: | 渋谷シアターTSUTAYAにて全国順次ロードショー |
ティム・ロス |
監督・脚本:フランシス・F・コッポラ |
2007/アメリカ、ドイツ、イタリア、フランス、ルーマニア/シネマスコープ/ドルビーSR、RD/124分
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10年の沈黙を経て、巨匠フランシス・F・コッポラの創作意欲を目覚めさせたのは、現代ルーマニア文学の巨匠が残した一編の幻想奇譚だった。
「ゴッドファーザー」3部作、「地獄の黙示録」と映画界に偉大な功績を残しながら、長年、映画の撮影現場から離れていたフランシス・フォード・コッポラ。当時、66歳にして欲求不満だったという彼は、ミルチャ・エリアーデが円熟期に著した『若さなき若さ(Youth Without Youth)』に出会い共感、すぐさま映画化を決意する。それが「レインメーカー」以来、10年ぶりとなる監督・脚本作の「コッポラの胡蝶の夢」だ。人生の最終章に再生する魂を得た一人の男ドミニクの数奇な運命を通じて、観る者を摩訶不思議な世界へと誘う。
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