ロシアのとある裁判所。センセーショナルな殺人事件に判決を下す瞬間が近づいていた。被告人はチェチェンの少年、ロシア軍将校だった養父を殺害した罪で第一級殺人の罪に問われていた。検察は最高刑を求刑。有罪となれば一生、刑務所に拘束される運命だ。3日間にわたる審議も終了し、市民から選ばれた12人の陪審員による評決を待つばかりとなった。
彼らは改装中の陪審員室の代わりに指定された学校の体育館に通され、全員一致の評決が出るまでの間、携帯電話を没収されて幽閉される。冷静沈着に事を進めようとする男に促されて、12人の男たちは評決を下すため、テーブルを囲んだ。審議中に聞いた隣人たちによる証言、現場に残された証拠品、さらには午後の予定が差し迫っている男たちの思惑もあって、当初は短時間の話し合いで有罪の結論が出ると思われた。
乱暴なチェチェンの少年が、世話になったロシア人の養父を惨殺した― そんな図式で簡単に断罪しようとする空気があり、挙手による投票でほぼ有罪の結論に至ると思われたが...。
新着映画情報
『12人の怒れる男』
原題:12
配 給 : | ヘキサゴン・ピクチャーズ/アニープラネット |
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公開日: | 2008年08月23日 |
映画館: | シャンテ シネほか全国ロードショー |
セルゲイ・マコヴェツキー |
監督:ニキータ・ミハルコフ |
2007/ロシア/シネマスコープ/160分
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1957年に登場した「十二人の怒れる男」(シドニー・ルメット監督)は、社会正義を謳いあげた法廷ドラマとしてアメリカ映画史に燦然と輝いている。1997年にウィリアム・フリードキンが「12人の怒れる男/評決の行方」として再びテレビ映画化するなど、法廷ドラマの原点といわれる所以で、この1957年作品は世界中の法廷ドラマに多大な影響を与えている。
今回、この法廷ドラマの原点に新たに挑んだのは、「機械じかけのピアノのための未完成の戯曲」や「黒い瞳」などで知られるロシア映画界の巨匠、ニキータ・ミハルコフ。現代ロシア社会が抱える価値観の混乱、多民族国家ならではの偏見を鋭く抉り出し、エンターテインメントのかたちのなかに、21世紀ならではのドラマに仕上げている。
第80回アカデミー賞外国語映画賞ノミネート作品