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2006年4月。イラク、サマラの米軍駐留地。
雑然とした兵舎で、メキシコ系のサラサールが、仲間達にカメラを向けている。彼は、ビデオ・ダイアリーを撮影して映画学校に入学するという目論みから兵役に志願した。ビデオに写るのは、故郷に妻を残して入隊した弁護士のマッコイ、「ファックと戦闘」に目がない貧しい南部出身のフレークとラッシュ、文学青年のゲイブ等、いずれも若い兵士たち。伍長のマッコイは、「この中で誰かが死ぬ。それが現実ってもんだ」と語るが、彼らの任務地は検問所であり、戦場でも撮る気のサラサールにとって、大した映像が撮れていないことが不満だった。
検問所の兵士は、自爆テロや狙撃の格好の標的だ。彼らは、暑さのなか、55Kgの装備の重みと、緊張のなかの退屈に耐えながら立ち続ける。減速の指示を無視して、猛スピードで走り込んできた一台の車。必死に止めようとする兵士達。と、なんらの躊躇もなく、フレークの銃が火を噴いた。"停止線を越えた車は、検問所を自爆テロで攻撃するとみなし"たのだ。だが、乗っていたのはテロリストなどではなく、産院へと急ぐイラク人の妊婦とその兄だった。撃たれて血に染まった妊婦は、病院での手当もむなしく死亡した。(この2年間で検問所で殺された2,000人のイラク人のうち、"敵"は60人だけだという..)
兵舎で、フレークが、サラサールの"取材"に答える。「任務を遂行しただけさ。人を殺したらビビると思ってた。でも魚を殺した程度だ。」 それを聞いたマッコイは、「自分の女房が妊娠していると考えろ!」とフレークに怒りをぶつける。
6月末。彼らの駐留はいつ終わるとも知れず、新たな作戦に参加することも、帰国することもできない。死と隣り合わせの検問所の横では、地元の少年達がサッカーで遊ぶ日常的光景が繰り広げられている。だが、そこにも安全はない。瓦礫の散乱する一角に近づいたフレークとロジャーの不用意さを警告し、2人の安全を確保した曹長のスイートは、次の瞬間、捨て置かれたボールに仕掛けられた爆弾で壮絶な死を遂げた。曹長の爆死を目の当たりにしたフレークは、恐怖と怒りから生来の過激性を露にしていく。「俺たちも殺される。9.11みたいに」「ジハード好きな野郎を吹っ飛ばすぜ!」ロジャーもフレークに呼応するように興奮を募らせる。
ある夜、彼らは、「戦争遂行に役立つ証拠」捜索の任務で、一軒の家に踏み込む。読めもしないアラビア語の書類を証拠とみなすロジャー。泣き叫ぶ家族達の前で、抵抗もしない男に頭巾をかぶせ、逮捕するマッコイやゲイブたち。
検問所は子供たちの通学路になっている。逮捕された男の娘2人は、毎日、検問所を通って学校に通っていた。下心のあるロジャーは、15歳の姉の身体チェックにますます入念になる。
7月。フレークは、カード遊びを楽しみながら酒に酔った眼で、「娘の家へ押し入ろう。先手を打ちに行くんだ。女こそ戦利品だ!」と言い出す。その"遠足"を撮影したいという欲望から、同行を決めるサラサール。マッコイの伍長としての権威も、良識も、彼らの異様なテンションの前では無力だった。彼は、「兵士たちの安全を守るため」という自己弁護のもと、一緒に赴くことになる。その夜、装備をつけ、「大量破壊兵器を捜すんだ!」とわめくフレークとロジャーを先頭に、サラサールとマッコイは、少女の家へと向かった...。
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