「ジーン・ウェブスター原作の名作「あしながおじさん」をベースに生み出された、“韓流”らしい直球のラブ・ストーリー」
|
>>拡大写真
(C)2005 CJ Entertainment Inc. All Rights Reserved |
ブームとしては落ち着いた、定着した感のある“韓流”。一般的には“ヨン様”、“ジウ姫”なんてところに注目が集まるのみだが、昨年(2005)、今年(2006)と2回にわたって開催された“韓流シネマフェスティバル”はファンの裾野を広げ、下地を固めたものとして見逃すことは出来ないだろう。注目のスターが出演している作品、“韓流”らしい王道を行く作品、スターは出演していなくとも面白さに満ちた作品、意欲作などをまとめて上映したこの特集上映は多くの“韓流”ファンに熱狂的に迎え入れられ、チケットの入手が困難になる作品も相次いだ。今回紹介する『ふたつの恋と砂時計』は“韓流シネマフェスティバル2006”で上映され、チケットがあっという間に売り切れた作品のひとつである。
現在(2006/6)も全国各地の映画館を順次上映中の“韓流シネマフェスティバル2006”では、この作品はオリジナル・タイトルの邦訳である『あしながおじさん』(『Daddy-Long-Legs』)というタイトルで公開されていた。そのタイトルから分かるように、この作品はジーン・ウェブスター原作による世界中の人々に愛され続けている小説・児童文学をベースにしている。「あしながおじさん」という小説は読んだことはなくてもそのタイトル、内容は多くの方が知っているだろう(こちらもご存知だろうが、日本では交通遺児育成基金としてその名が使用されている)。孤児の少女が名の知れぬ人物から奨学金を受け、大学に進学する。彼女はその人物に毎月1回、学業など身辺を書いた手紙を送り続けるという、その手紙を軸に描かれていくこの小説は彼女がシルエットから名付けたあしながおじさんへの想いと共に、瑞々しい少女の気持ち、大学生活が綴られている作品でもある。『ふたつの恋と砂時計』は今までに何度も映画化されているこの名作小説に“韓流”らしいノリを持ちこみ、別の物語を生み出している。
|
>>拡大写真
(C)2005 CJ Entertainment Inc. All Rights Reserved |
物語の主人公は幼い頃に両親を失った高校生である。新聞配達などをしながら学校へと通い続けていた彼女は志望していた大学への入学が決定する。入学金の調達など希望と共に大変な部分を抱える彼女だったが、その日に差出人不明の人物から綺麗な靴が届き、大学への入学金も誰かが支払っていく。住所は私書箱であるその人物に彼女はあしながおじさんと名付け、その私書箱のある郵便局でずっと待ち続けるが出会うことはなかった。結局、彼女は日々の出来事を手紙に書き、送り続ける。そして数年後、放送作家として地方のラジオ局で活躍していた彼女はメイン局への移動を命じられ、病気療養中の上司のものだという空き家を幸運にも借りれるようになる。ある日、彼女はその家のパソコンにその家主の秘密らしきものを見つけてしまう。
彼女が見つけたのはある病に侵された女性が男性に対し長年にわたる秘めた想いをこめたメール、日記ともいえるものだった。この手紙を翻案してラジオのシナリオに使用すること、そして今でも彼女のもとに届けられるあしながおじさんからの励ましにラジオのコーナーを通して応えることで、人気が低調していた番組も復活し、険悪だったスタッフとの関係もうまく行くようになる。そして彼女の中にはこのラジオ局で出会った男性とのほのかな恋も生まれてくるのだ。でも、それだけでは済まない大きな展開があるのが“韓流”らしいノリであり、面白みでもある。
|
>>拡大写真
(C)2005 CJ Entertainment Inc. All Rights Reserved |
物語は主人公がパソコンの中の知ってしまった見ず知らずの人物の切ない恋が「宮廷女官チャングムの恋」への出演で注目を浴びるパク・ウネと“韓流シネマフェスティバル2006”でも人気作品のひとつだった『まわし蹴り』のヒョンビンによって演じられ、主人公を演じる「バリでの出来事」、『デュエリスト』 のハ・ジウォンと「悲しい恋歌」のヨン・ジョンフンの初々しい、淡い恋も同時に描かれていく。そして、彼女の家にまで居候することになったADの女性(シニがいいノリで演じている)のちょっと可笑しな恋模様もいいアクセントとして描かれている。
それだけでは済まない大きな展開については書かない。でもそれが“韓流”らしいノリでになっていることだけは確かだ。この韓流”らしいノリはファンからすれば直球である。これまでもこうした直球が様々な“韓流”作品で投げられてきたが、棒球であったり、コースを外れていたりと散々な部分もあった。でも、この作品はズドンとミットにくる直球になっているのではないだろうか。
最後まで観るとタイトルを変えたということも納得である。ただ、男の眼からすれば、許せない話でもあるのも正直なところ。でも、“韓流”ラブストーリーが好きなら楽しめることは間違いないだろう。ぜひ、劇場に脚を運んでください。 |