「アメリカを始め、世界中で圧倒的な人気を獲得しているアニメーション番組「スポンジ・ボブ」の映画版がついに日本でも公開」
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(C)2004 Paramount Pictures and Viacom International Inc. |
アメリカでは大ヒットを記録していても日本では公開がうまく運ばない作品があることは書いたと思う。そこには色々な原因があるのだろうが、劇場公開をしてもヒットする見込みがない、映画の価格に見合わないことが最も大きな要因となっているはずだ。今回紹介する『スポンジ・ボブ/スクエアパンツ』もそういった作品のひとつである。
スポンジ・ボブはアメリカでは圧倒的な人気を誇っているアニメーション番組である。地球最大の子供向けTV番組のチャンネルである“ニコロデオン”でこの番組の放映が始まったのは1999年。放送後、あっという間に人気を博し、2001年後半以降、全米の子供向けTV番組として視聴率1位をキープし続け、2002年にはアメリカのTV番組のアカデミー賞にあたるエミー賞にもノミネートされている。この人気番組の待望の映画版であるこの作品がアメリカで公開されたのは2004年11月のこと。もちろん、大ヒットを記録したのだが、日本での公開は話題に上ることもなく、DVDにもならず、このままお蔵入りになってしまうのかと思われた。しかし、アメリカでの公開からほぼ1年半、やっと公開が決定したのだ。熱狂的なファンはすでに輸入版のDVDなどを購入しているかもしれないが、まずはこの公開を素直に喜ぼう。
実はこのスポンジ・ボブは日本でも“スカイパーフェクトTV!”やケーブルTVで視聴することが可能であるし、そのキャラクター自体はTシャツ、ぬいぐるみ、キーホルダーなどとしてキャラクターショップなどで販売され、一部で人気となっていた。スポンジ・ボブというくらいなのだから、そのキャラクターの原型となったのは“スポンジ”である。今ではあまり使用されることもなくなった“スポンジ”といったらこれ!という使いすぎるとボロボロになり、割れてきてしまう黄色い四角いスポンジが目鼻口、胴体となり、そこに針金人形のような手足が付いたのが「スポンジ・ボブ」である。彼は海底都市“ビキニボトム”の人気バーガー店カニカーニで店員として働いている。格好はいつだってボタンダウンのシャツに半ズボンにネクタイ。実はこれカニカニーのユニフォーム。スポンジ・ボブはいつだって誇りを持ってカニカーニのパテを焼き続けている店員なのだ。
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この作品の物語はそんなカニカーニの2号店がオープンするというシーンから始まる。スポンジ・ボブはもちろん自分が店長になれると確信しているが、「子供だから」という理由でその夢はあっさりと崩れてしまう。友人のヒトデのパトリック・スターとやけになるスポンジ・ボブだが、カニカーニに大きな危機がやって来る。オーナーのカーニさんがネプチューン王の王冠を盗んだ疑いで捕まってしまうのだ。スポンジ・ボブは親友のパトリック・スターと王冠を取戻し、店長の座を手に入れるべく、冒険の旅へと出かける、というもの。ありがちな子供の冒険譚なのだが、これが思わぬ飛び道具なども登場して面白く、ちょっと感動的な展開となっている。
作品の監督、脚本、製作を手掛けているステファン・ヒーレンバーグは「教育の現場で子供と接することで、彼らが何を喜ぶか知った」と語っている。元々は海洋学博士であるステファンはそうした経験をもとに海をテーマにしたアニメーションを考え始め、それがスポンジ・ボブへと繋がっていく。子供をターゲットとしたスポンジ・ボブは子供だけでなく、大人までも巻き込み、キャラクターグッズも子供のものから大人のものまで発売され、売れに売れ続けている。このHPのコラムでもおなじみの電気羊さんは「大人も引きつけて止まないあの一種独特の、不条理なまでにカラカラに渇ききった(海の底なのに)ユーモア」とTV版スポンジ・ボブの魅力について書いているのだが(だからこそ映画は期待はずれだったというが)、この作品ではそういった部分よりもスポンジ・ボブと親友のパトリック・スターの子供らしくもへこたれない前向きな気持ち、映画全体に漂うノスタルジックな雰囲気に大きな魅力があるように思える。ノスタルジックさは作品全編に流れる音楽(フレイミング・リップス、ウィーン、ウイルコなど錚々たる面々)、TV版と同様に全てを手描きで行ったというアニメーションのタッチと配色が生み出しているものである。子供と一緒に観にいったら、間違いなく、このノスタルジックさにやられる方は多いはずだ。
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僕はTV版を観たことがなく、この作品をきっかけにスポンジ・ボブの世界に入ったのだが、そのノスタルジックさゆえに想像以上に面白いと感じた。子供じみた、不条理な世界が展開しており、後半の飛び道具の登場(これはこれで最高なのだが)以降は物語自体もぶっ飛んだものになっていくのだが、王冠を取り返しに怪物が棲む、生きては帰って来れないというシェル・シティにたどり着くまでは子供と一緒に観ても存分に楽しめる、いい意味で気の抜けたような冒険譚となっている。しかもこういう作品にありがちな汚い言葉が少ない部分にも好感が持てた(残念ながら吹き替え版での上映はないようだが)。きっと、この映画版を観て、スポンジ・ボムの世界に嵌る方が続出することは間違いないだろう。
なぜか愛らしいキャラクター、不条理だけど愛情のある物語、スポンジ・ボブの魅力的な世界を味わうために、ぜひ、劇場に脚を運んでください。 |