「冬眠から目覚めたら自分たちの森に住宅が建っていたことから始まる動物VS人間の大騒動!痛烈な現代文明への皮肉も込められた、子供はもちろん大人も楽しめるドリームワークスの最新アニメ」
|
>>拡大写真
(c)2006 DreamWorks Animation LLC and DreamWorks LLC. Over The Hedge TM DreamWorks Animation LLC. |
ハリウッドのアニメーション映画の双璧であるディズニーとドリームワークス。アカデミー賞に長編アニメーション部門が設けられたのは21世紀、2001年に入ってからだが、この賞は2002年の『千と千尋の神隠し』の受賞を除き(といっての配給はディズニーもまかなうブエナヴィスタだ)、2005年の『ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!』(ドリームワークス出資)、2004年の『Mr.インクレディブル』(ディズニー/ピクサー)、2003年の『ファインディング・ニモ』(ディズニー/ピクサー)、2001年の『シュレック』(ドリームワークス)とそれを証明するようにディズニー(厳密にはピクサー)とドリームワークスが火花を飛ばしているのだ。そこには大きな因縁が存在していることをご存知の方も多いだろう(マイケル・アイズナーの辞任で終焉したのだろうか)。今年の夏もこの両雄の作品が公開される。ディズニー/ピクサーは『カーズ』、そしてドリームワークスはここで紹介する作品『森のリトルギャング』である。
この作品の主人公は豊かな自然に恵まれた森で暮らしているの動物たちである。春がやって来て、冬眠から眼ざめた彼らは自分たちの住処である森の中でこれからの食料探しなどに奔走しようとするが、そこである事実に気づく。それは自分たちの森が以前の状況とは違うということ、人間の住宅地になっているということだった。
|
>>拡大写真
(c)2006 DreamWorks Animation LLC and DreamWorks LLC. Over The Hedge TM DreamWorks Animation LLC. |
豊かな自然が失われて、開発されていくという部分では自然環境の保護を訴えるような作品にも思えるが、この作品のもっとも大きなテーマは“物質主義”、“物欲”である。作品の主人公のひとりは放蕩者ともいうべきアライグマ。オープニングのシーンで彼は自動販売機から大好きなスナック菓子を取ろうと思うのだが(なんとコインまで投入するのだ)、詰まってしまったことから、空腹を癒すために、冬眠中のクマの穴倉に潜入。このクマの保存食はスナック菓子、ジュースなど人間のものだらけ(ご丁寧にカートに乗っている)。それを盗もうとしたが失敗、。その上、品物を全部台無しにし、それを冬眠から目覚める1週間以内に集めることを約束させられる。出来なければ、もちろん命がないのだ。このアライグマは先の森で呆然としている動物たちに「人間の世界にはおいしいものが一杯ある!」と伝授し、彼らをうまく使いながら、約束の期日までに品物を集めようと奮闘するわけだ。
作品の元になったのはアメリカで絶大な人気を誇るコミック「OVER THE HEDGE」(この作品のオリジナルタイトルでもある)。このコミックは郊外の町を舞台にその垣根越しに存在する動物たちの視点から人間の欠点や虚偽を皮肉と辛辣な視点を持ちながら描いているという。例えば、自分たちのペットにはこの上ない愛情を注ぐのに、垣根越しの隣人である動物たちには悪魔にでも出会ったかのような態度をとったりする奇妙な人間たちの生活が描かれているのだろう。そうした部分はこの作品にも十二分に活かされている。それは森の生み出す豊富な資源で暮らしていた動物たちが人間のチープなものに侵されていく部分などに端的に現れている(それを笑うということは、自分たちの生活を笑うことでもあるのだ)。また、自分たちの憧れの生活を守るために必死の人間たちの様子もとにかく可笑しい。
とはいっても、そういった具合に観てしまうのは大人だけだろう。アライグマ、カメ、リス、スカンク、ヤマアラシ、オポッサム(フクロネズミとも呼ばれる外見はネズミに似た有袋類の動物)、クマといった動物たちのキャラクターは可愛いし、放蕩者でお調子者のアライグマにのせられていく中、それまでこのグループのリーダだったカメが「人間の世界は危険が一杯だから近づかない方がいい」と諭すものの、理解が得らず、孤独になったり、そこから新たな友情が芽生えたりという友情と成長というお約束ともいうべき展開もうまく描かれている。
主題歌を担当するのはベン・フォールズ。ビーチ・ボーイズ的なオープニング・テーマの心地よさは格別だが、エンディングはなんとクラッシュの「ロスト・イン・ザ・スーパーマーケット」のカバー・バージョン。この対比も最高である。
スラップスティック的なテンポの良さ、しかもちょっと感動もブレンドされた楽しくも、痛烈な現代文明、“物欲”への批判が込められたこの作品は子供も大人も存分に楽しめるものとなっている。次のアカデミー賞にノミネートされることもきっと確実だろう。ぜひ、劇場に足を運んでください(でも、映画が終われば、キャラクター・グッズを買わされたりもするのだろうな)。
|