「タイで大ヒット!驚異的な身体能力を持つ少数民族のサッカー・チームが都会で体験する誘惑と成長をコミカルかつ、ちょっと感動的に描いた、お勧めの“裏”サッカー映画」
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サッカーのワールドカップ真っ只中、眠い眼をこすりながら会社、学校へと脚を運んでいる方々は多いのではないだろうか。ワールドカップが始まるとなれば、サッカーをテーマにした作品も公開されていく。現在、ヒット中の初のFIFA公認映画『GOAL!』、サッカー大国ブラジルならではの底の深さを捉えたドキュメント『ジンガ』、熱狂的なサポーターを主人公とした『フーリガン』、ジダンのドキュメンタリー作品『ジダン 神が愛した男』など、サッカー好きならどれもこれもが見逃せない作品だろうが、サッカー好き以上に映画好きを楽しませる“裏”サッカー映画も公開される。そのひとつが、今回紹介する『アフロサッカー』である。
『アフロサッカー』というインパクトのあるタイトルから、アフリカのどこかの国の驚異的なサッカーが描かれているのかと想像する向きもあるかもしれないが、それは違う。これは世界も注目するアジアの映画国タイから登場した作品である。
タイという国は民族的にはタイ族が中心だが、山間部を中心に少数ながらも多用な民族が暮らしていることを知っている方は多いと思う。この作品の主人公たちはそんな山間部に暮らす“サガイ族”という少数民族なのである。タイ南部からマレーシアにかけて暮らし、“森の王者”とも呼ばれている彼らは黒い肌、大きな鼻、厚い唇、そして縮れた髪の毛などの身体的な特徴を持っている。背は低いのだが、一見すれば、それはラテン系か、アフリカ系かという容姿なのである。ここまで書けばお分かりだろうが、タイトルのアフロサッカーとはそんな彼らの容姿から来ているのだ(もちろん、これは日本のみのタイトルだ)。そして、そんな彼らのプレイ・スタイルは自らの身体能力を最大限に活かしたアフリカの国々のサッカーと同じように驚異的なものなのである(だから、こっちの意味でもアフロ・サッカーである)。
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物語はこの驚異的な能力を持つサガン族のサッカーチームに借金取りの一味から逃げまくっていた男が偶然出会うことから始まる。実はこの男はサッカー賭博で身を崩したサッカーの元審判。試合中のサガン族のチームの身体能力を見抜いた男は試合後にあっさりと消えてしまった彼らをジャングルの中にまで追い求め、自らがコーチとなりこのチームで一儲けを企もうとするのだ。
偶然出会ったサガイ族の試合の勝ち負けに有り金全てを投資するなどコーチとなる男は根っからのギャンブル好きなのだが、この男がチームのコーチになれたのには大きな理由がある。村には原因不明の病気が流行っており、それを救うにはサッカー大会の優勝で手に入れられるカップが必要だと村の長老が誤解をしたからだった。カップの絵柄(この辺はタイ国民の王様への敬愛がにじみ出ている)と、この村をはるか昔に救った薬袋の絵柄が同じだったというのがその誤解の元なのだが、ともあれコーチは金のために、選手はカップを手に入れるために都会へと向かっていく。そして、都会で彼らは都会の妖気、誘惑にやられてしまうのだ。
あっという間にマスメディアからも注目を浴びた彼らは人気者となってしまう。コーチにはポケットマネーが転がり込み、選手たちは夜毎の狂騒、ドラッグ、アルコール、セックスへと嵌まり込んでいく。その結果、コーチは再び、借金取りに見つかり、追われる身となり、選手は普段の力すら発揮できず、カップのことすら頭からなくなっていくのだ。
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作品のテイストはコメディ・タッチの青春映画である。選手たちの驚異的なプレイはもちろん、セックスしたいがゆえに「おれはサガンの選手だ。一発やろう!」と誰彼かまわず声をかける、ディスコでむちゃくちゃなダンスをしまくる、ドラッグの幻覚に悩まされるなどこの世の、都会の春を謳歌する選手たち、金ほしさのコーチの行動には大笑いする部分も多い。でも、金ゆえに窮地へと追い込まれていくコーチ、そんな言葉では誰も相手にしないこと、ドラッグでサッカーすら出来ない姿は現実の反映でもある。選手もコーチもそうした部分を苦悩し、乗り越えていくのが、この作品の青春部分であり、大筋となっている。タイトルの印象とは違い、結構まじめな、ちょっと感動しちゃったりもする作品なのだ。実際、この作品の監督であるソムチン・スィースパープは「トーナメント中、彼らは人生におけるさまざまな重要な教訓を学びます。そして大人になっていくのです。」と作品のテーマについて語っている。
『少林サッカー』ばりのサッカー・シーンにコミカルな展開、そこに交わるチーム一丸となっての成長という物語はありがちな展開かもしれないが、この手のエンタテインメントが好きなら存分に楽しめるはずだ。もちろん、サッカー経験者を配したサッカー・シーンの出来も良いし、ラストにはちょっとグッと来る出来事も待っている。TVに釘付けで、興奮しっぱなしのワールドカップの合間には最高の息抜き的な作品となるだろうし、アジア映画好きにも納得の作品となるはずだ。ぜひ、劇場に脚を運んでください。 |