「『私立探偵 濱マイク』シリーズなど探偵にこだわる林海象監督が映画館、インターネット、コミックなど様々なメディアから送り出す林版探偵映画の集大成的作品の映画版第1弾」
映画の主人公として頻繁に描かれ、男の理想像ともなっていた探偵という商売。ため息が出るほど格好いいはずだったのに、最近のTVなどに出てくる探偵はどうも違うなという感触を抱いている方も多いのではないだろうか。ま、実際はそんな地味な仕事しかないのかもしれないが、映画に描かれていた格好よさ、面白さを求めている方も多いはずだ。そんな方にとって最高の作品が公開される。それが今回紹介する『探偵事務所5″〜5ナンバーで呼ばれる探偵達の物語〜』である。
この作品『探偵事務所5″〜5ナンバーで呼ばれる探偵達の物語〜』を監督したのは林海象。分かる人には分かるだろうが、今の日本で最も探偵という職業にこだわっている監督である。モノクロサイレンという作り(音楽はあり)、昭和初期というノスタルジーに満ちながらも不思議な世界感に満ちたデビュー作『夢みるように眠りたい』、より幅広い世代に林海象の名を知らしめた『私立探偵
濱マイク』の映画とTVによるシリーズという探偵が主人公の作品。それに加えて、探偵という世界を極めたいと思った林監督は探偵協会を卒業し、自らも探偵としてのナンバーを取得している。そうした探偵への深い思い入れを持つ林監督が「探偵ブームを起こしたい」という気持ちまでも込めて作り上げた作品が、この『探偵事務所5″〜5ナンバーで呼ばれる探偵達の物語〜』なのである。
この作品『探偵事務所5″〜5ナンバーで呼ばれる探偵達の物語〜』はこの映画1本で完結する物語ではなく、インターネット・シネマでの放映やコミック化など様々なメディアと繋がることによって形作られる物語となっている。その主人公は頭に5という数字の付いた500〜599までの探偵たちである。先にあげた様々なメディアでこの探偵たちひとり一人の物語が語られ、その人脈や事件の背景など重なり、繋がることにより、完成する作品なのである。林監督は「濱マイクも5ナンバーを持っているはずです。501を演じる佐野史郎は、僕の頭の中では『夢みるように眠りたい』の私立探偵・魚塚(佐野史郎が演じている)の息子というイメージです。全体像としては、“5”の本部があって、さらに支部がある。そして“5”に対抗する組織である“4”、女性探偵たちが所属する“6”がある。そうした“5”の成り立ちや、映画には登場しなかった他の“5”ナンバーの物語をインターネットのショート・ドラマで連続して描いていく。」と『探偵事務所5″〜5ナンバーで呼ばれる探偵達の物語〜』シリーズの全体像を語っているが、濱マイクや『夢みるように眠りたい』の私立探偵などがこの作品に繋がっているところ、終了までにはそれなりの年月を要するであろうスケール感の大きさを考えても、この『探偵事務所5″〜5ナンバーで呼ばれる探偵達の物語〜』というシリーズがその傍系作品も含めて、探偵にこだわり続けた林監督の探偵映画の集大成的なものになるのは間違いないだろう。
この劇場で公開される作品『探偵事務所5″〜5ナンバーで呼ばれる探偵達の物語〜』はこのシリーズものの最初のエピソードに当たる作品で、圧倒的な人気を誇る若手俳優
成宮寛貴演じる探偵591が主人公の第1話とお笑いコンビ 雨上がり決死隊だけでなく、役者としても高い評価を獲得する宮迫博之が演じる探偵522が主人公の第2話が描かれている。このふたつの物語はそれぞれ独立した物語でありながらも、その裏には合い通じる大きなひとつの物語が存在するという映画的な展開を有している。
成宮寛貴演じる探偵591は過酷な試験に合格し、591という探偵ナンバーを手にしたばかりの若者だ。彼はこの事務所の会長である500という探偵ナンバーを持つ宍戸錠の孫娘の依頼で行方不明になった彼女の親友の調査を開始する。591が突き当たったのはある美容外科の存在だった。一方、浮気調査専門の探偵である522は591がぶち当たった美容外科を自らの大きな理由によりずっと調査し続けていた。第1話で完結したひとつの事件が第2話ではより深い部分へと入り込んでいくのだ。
自分の調査対象に591が突然入ってきたことから、最初は全くいい気のしない522が591の意欲を買い、探偵として認めていく部分、そこかしこに散りばめられた細かなギャグなど物語の構成も良く出来ているし、5の探偵たちの制服である黒いスーツ、本部の建物、探偵たちの予定が一覧できる受付の掲示板、彼らが乗る車、小道具などはノスタルジックなあたたかさ、格好よさに満ちている。このファッション性は林監督らしいこだわりであり、こうした部分を観るだけでも存分に楽しめるはずだ。そして何よりも魅力的なのが、591、522の他に登場してくる5の探偵たちだ。全部で100人がいる中の僅か数名しか登場していないが、ほんの少しの時間の登場であっても彼らの魅力が伝わってくる。個人的にはこの作品の中で最もいい役を演じているのではないかとすら感じてしまう探偵553を演じる池内博之が印象に残った。そして、こうした映画にも登場していない5の探偵たちの物語はインタ-ネット・ドラマとして楽しむことが出来る(劇場版映画に先行し、すでに放映中。
http://www.tantei5.com/net/ )。林監督はこの映画だけではなく、全体像が出来上がったときにひとつの群像劇として面白くなればと語っているが、この作品だけでも面白いし、ここに登場した人物が更に交わってくれば更に面白くなるだろうなという期待を抱かせてくれる。
この『探偵事務所5』は現在はインターネット(26話)、コミック、映画のみのようであるが、映画化の第2弾も予定されているようだし、展開の仕方によってはTV、その他のメディアも巻き込んでより大きくなっていくはずだ。これは今後の映画の方向性という意味でも興味深いプロジェクトである。その手始めとして、この粋な、洒落た映画版を楽しむために、ぜひ、劇場に脚を運んでください。 |