「読者からの一通の手紙、それがひとつのドラマの始まりだった」
出版社で記者として働く橋本香織は長い張り込みの末に人気清純派女優のスキャンダルをスクープする。一躍社内の注目の的となった彼女だが、今度は別の運命が彼女にやってくる。その女優が自殺未遂をしたのだった。職場での自分の場所を失った彼女は、信頼する上司の勧めもあり、実家のある下関に近い福岡のタウン誌で働くことになる。
タウン誌で彼女が担当したのは読者からの投稿を元に取材し、記事を書き上げていく〈懐かしのマイ・ブーム〉というコーナーだった。多くのハガキの中から彼女が惹き付けられたのは「昭和30年代の終わりから40年代の中ごろ、下関の映画館にいた幕間芸人を探して欲しい。人情溢れるその舞台には心が和み、世知辛い世の中にもう一度あの時間を過ごせたら」というものだった。編集長の5日で記事をあげることとの約束の下、彼女は下関へと取材に向かう。
その「みなと劇場」という映画館は今も存在し、その幕間芸人を知るもぎりの女性 宮部絹代といい、この幕間芸人であろう安川修平について知る限りのことを語ってくれた。香織は安川修平を探したいという想いを強く抱き始める。その夜、香織はずっと連絡を取っていなかった父へ泊めて欲しいと連絡を入れる。 |