「17年の歳月がもたらしたのは、変化した町並みだけじゃなかった。」
21世紀を目前に、第二の黄金期に突入したアジア映画。
中国、台湾、香港、韓国、日本など、アジアの監督が大活躍をし、年ごとに予測を上回る活況が各国に展開されている。その一翼を担う中国から登場してきたのが、90年代から活動をはじめた偉才チャン・ユアン。本作も期待に違わず、親子の情愛をきめこまやかに描き、99年ベネチア国際映画祭銀獅子賞受賞の栄誉に見事輝いた。
北京という町で貧しく生活する者の姿、胡同(路地)の景観、水餃子屋の輪タクなど庶民的な風物詩、そして様々な光、沈黙や物音―それらのすべてが慎ましく、微細な表情をもって画面
に現れてくる。 殺人事件が物語 の発端となりながら、明瞭な悪人など誰ひとりとしていない。
あるのは、自分の気持ちを真っすぐに表に現わせない者たちの、胸に染み入るほど人間 的な哀しみだけだ。
やがて映画は,家族の和解、再生という、現代の都市生活者 が求めてやまない主題に行き着く。それも、あまりに静かな哀調を伴って。最後にはついに訪れた家族間の心の交流を、遠い旧正月の爆竹の響きがことほぐ―。
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