「雰囲気のあるヴィジュアル的な要素が光るアクションも満載の韓国初のSFブロックバスター作品」
テレビを見ても、雑誌を開いても、必ず紹介されている韓国のスターの来日情報や作品情報。韓国映画やドラマなどの流行で生まれている“韓流”と呼ばれる風はここ当分の間、止む気配はないようだ。そういった流れに乗り、今年(2004)は大作からアート系の作品まで様々な韓国映画が公開されている。そういった作品を観て、韓国映画の魅力の一端に触れた方も多いと思う。今回紹介する作品もそんな韓国映画『イエスタデイ
沈黙の刻印』である。
2020年の統一された朝鮮半島を舞台に展開していくこの作品『イエスタデイ 沈黙の刻印』はSF的な要素、ミステリー的な要素、アクション的な要素が詰め込まれた韓国初のSFブロックバスター作品である。物語は、連続して起こる政府機関で働いていた科学者の誘拐事件、不可解な犯人の目的、事件を追う特殊捜査隊と女性犯罪分析官、30年前に政府機関で極秘に進められていたプロジェクト、これらのテーマがど派手なアクションシーンを盛り込みながら、展開し、ひとつの道筋へとつながっていく。
この『イエスタデイ 沈黙の刻印』は製作費に80億ウォンという莫大な金額(あの『シュリ』を超えている)が投入され、作品の中で大きなキーとなる科学的な要素などの裏づけのために、韓国内のあらゆる大学機関の協力を仰ぎ、2年間の準備期間を費やし、近未来の都市の設計にも有数の機関が協力、セットの設計には5ヶ月を要するなど、そのプロジェクトの大きさから韓国国内でも大きな話題を呼んでいた作品である。実は日本では2002年東京国際映画祭のコリアン・シネマ・ウイークで公開されて、大きな注目を浴びていた知る人ぞ知る作品でもある。その作品がやっと日本でもロードショー公開されるのは、やはり“韓流”という追い風によるところが大きいのだろう。
主演は韓国では“メロドラマの王者”とも称されるキム・スンウ(『ホテリアー』、『新貴公子』)、日本でも人気の女優キム・ユンジョン(『シュリ』、『蜜愛』)、韓国の名優チェ・ミンス(『ユリョン』、『ソウル』。余談だが、ウォン・ビンは彼の演技を見て俳優を志したという。)、この作品が映画デビュー作であったキム・ソナなど。監督は助監督などで下積みを重ね、この作品が監督デビュー作となったチョン・ユンスである。
この作品について、チョン・ユンス監督は「ストーリや人物はもちろん大事な要素だと思いますが、映画そのもを楽しむことが何より大切なことだと思っています。そのためにも私はこの作品がゴージャスになってほしかったのです。そして、作品のストーリーを追いかけるのもいいと思いますが、常に作品の内容に関する“なぜ?”という疑問を持ち続け、考えて欲しいです」と語っている。監督が目指したという“ゴージャス”な部分は、前述したリサーチやど派手なアクション、ヴィジュアルなどの雰囲気作りに表れていると思う。また、話が多少込み入りすぎていて分かり難いと感じるストーリー展開も“なぜ?”という疑問を持たせるためにあえてそういう方向に持っていったのかなという気がしないでもない。ただ、主演俳優たちの熱演やアクション・シーン、そして監督が現実感のある近未来都市を目指したというビジュアル面など引き込まれる部分も多いだけに、この込み入ったストーリーが作品に入り込めるかどうかの大きなポイントになってしまっているというのは正直、もったいない(監督自身は“父”をキーワードに作品を観ていけば、作品が理解しやすくなると語っている)。それでも雰囲気のあるヴィジュアル的な要素、アクションなど見所は満載ですし、入り込めれば納得の作品のはず。韓国映画ファンはもちろん、アクション好きの方など、ぜひ、劇場に足を運んでください。
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