『しあわせな孤独』
配給：ギャガ・コミュニケーションズGシネマグループ
オフィシャルサイト：
http://www.gaga.ne.jp/shiawase/
ソニア・リクター
マッツ・ミケルセン
ニコライ・リー・カース
パプリカ・スティーン
スティーネ・ピェルレガート
監督、原案：スザンネ・ビエール
プロデューサー：ヴィベケ・ウィンデロフ
製作総指揮：ペーター・オールベック・イェンセン
脚本：アナス・トーマス・イェンセン
撮影：モーテン・サーボリ
音楽：イェスパー・ヴィンゲ・レイスネール
（メインテーマ：アングン）
2002年/デンマーク/カラー/スタンダード・サイズ/サラウンド/1時間53分
「デンマークで大ヒットを記録した深い印象を残す人間ドラマ」
2002年秋、デンマーク国内で8人に1人が観るという大ヒットを記録。翌年のデンマーク・アカデミー賞では最優秀作品賞をはじめ、数々の賞を受賞。その他、2002年のノルディック・フィルム・デイズ、2003年のロベルト・フェスティバルでも最優秀作品賞などを受賞した作品が、今回紹介する『しあわせな孤独』である。
デンマークの映画というと余りなじみがないように感じるかも知れないが、『子供たちの城』、『ペレ』のピレ・アウグスト監督、ビョークが主演し、カンヌでの受賞など大きな話題となった『ダンサー・イン・ザ・ダーク』、『奇跡の海』のラース・フォン・トリアー、『バベットの晩餐会』などの良質な作品が日本で公開されているし、“ドグマ95”と呼称されるハリウッド式の映画作りに異議を唱えた映画作りが提唱されたりして大きな話題を呼んだりもした。このドグマという言葉を耳にすることは少なくなったけれど、このセオリーに従って撮影されている映画はデンマーク以外にも広がり、すでに30本以上になっている。ドグマというものを知らない方もいると思うので、簡単に説明すると「手持ちカメラでの撮影」、「自然光での撮影」、「ロケーションによる撮影」など撮影方法に関して10の条件を設けている。要は人工的な作りこみをしない映画の撮影方法ということだ。こういった撮影方法は今までにもあったが、ルールとしては存在していなかったので、大きな話題となったのである（作品のカンヌでの受賞もあった）。そして、実はこの『しあわせな孤独』もドグマのセオリーで撮られている。しかもその効果が存分に発揮されている作品なのである。
物語は結婚を間近に控えたカップルに降りかかった彼の首から下が不随になるという交通事故とその彼が担ぎこまれた病院に勤務する事故を起こした運転手の夫とその家族との関係の運命のいたずらのような変化を描いたある意味ではありがちともいえるものなのだが、これがクローズアップを多用するカメラワーク、自然光（部屋と夜のシーンが多い）によるざらついた映像、音楽（ドグマは音楽の使用法にも決まりがある）などが重なってくることにより、一層の深みと厚みを増した印象をもたらしてくるのである。元々、ドキュメント的なタッチになりがちだったドグマのスタイルに良質なドラマが化学反応を起こしたと言えばいいのだろうか、本当に印象を深く残す作品に仕上がっている。
監督はこの作品が日本初公開となるスザンネ・ピエール。デンマーク国内だけでなく、国外でも非常に高い評価を受けている女性監督である。監督自身はこの作品について「私は常に人生の脆さというテーマに関心があった。予期せぬ出来事が起こった時、私たちは驚くほど無力になるのだから。」、「（ドグマのスタイルについては）楽しかった。利点は照明を使わないこと。それにより、役者も自由を得られるから。」と語っている。
個人的にはたわいもないのだけれども深みを持った小説を読み終えたような感慨を抱いた作品である。その印象をどう語ったらいいのかが分からないんだけど、“残る”のです。マイケル･ウインターボトム監督の『ひかりのまち』が好きな人は、きっと好きだろうなと思います（観終わった後の感覚が似ています）し、映画にしろ小説にしろ、淡々とした中に光のある人間ドラマが好きな人は気に入るんじゃないかなと思います。ドグマなんて気にせずに、ぜひ、劇場でこの印象を味わってください。
「幸せが一転、不幸へと変わり、その不幸から･･･」
コックとして働くセシリと大学で地理学を専攻しているヨアヒムのカップルは、同棲生活を送っている。ある夜、ヨアヒムはセシリにプレゼントを贈る。それは婚約指輪であった。そんな幸せの絶頂にあった二人だが、事態は大きく変わる。ヨアヒムがセシリの目前で車にはねられたのだ。その結果、ヨアヒムは首から下が不随となってしまう。
ヨアヒムをはねた運転手は彼が運び込まれた病院の医師ニルスの妻マリーであった。彼らには3人の子供がいる。避けられない事故であったため、ニルスは「君のせいじゃない。」とショックを受けたマリーを慰め続け、マリーの代わりにセシリに謝罪をする。その時に何かあったら相談に乗るからと自分の携帯番号を書いたメモを渡した。
自分の状態に絶望しているヨアヒムは周囲を受けつけず、セシリに別れを切り出す。受け入れられないセシリは何度となくヨアヒムの病室に通うが、拒絶の態度は変わらない。そんな状況に耐え切れなくなったセシリはニルスの携帯に電話をかける。最初は慰め程度の電話だったのだが、状況は少しずつ動き始める。
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2002年秋、デンマーク国内で8人に1人が観るという大ヒットを記録。翌年のデンマーク・アカデミー賞では最優秀作品賞をはじめ、数々の賞を受賞。その他、2002年のノルディック・フィルム・デイズ、2003年のロベルト・フェスティバルでも最優秀作品賞などを受賞した作品が、今回紹介する『しあわせな孤独』である。
物語は結婚を間近に控えたカップルに降りかかった彼の首から下が不随になるという交通事故とその彼が担ぎこまれた病院に勤務する事故を起こした運転手の夫とその家族との関係の運命のいたずらのような変化を描いたある意味ではありがちともいえるものなのだが、これがクローズアップを多用するカメラワーク、自然光（部屋と夜のシーンが多い）によるざらついた映像、音楽（ドグマは音楽の使用法にも決まりがある）などが重なってくることにより、一層の深みと厚みを増した印象をもたらしてくるのである。元々、ドキュメント的なタッチになりがちだったドグマのスタイルに良質なドラマが化学反応を起こしたと言えばいいのだろうか、本当に印象を深く残す作品に仕上がっている。
コックとして働くセシリと大学で地理学を専攻しているヨアヒムのカップルは、同棲生活を送っている。ある夜、ヨアヒムはセシリにプレゼントを贈る。それは婚約指輪であった。そんな幸せの絶頂にあった二人だが、事態は大きく変わる。ヨアヒムがセシリの目前で車にはねられたのだ。その結果、ヨアヒムは首から下が不随となってしまう。
