「“治験”を舞台にした恐怖にあふれる作品」
ここのところ、映画情報を見たりしながら感じていたことのひとつに日本の若手監督の作品の多さというものがある。ほとんどの作品が単館で、レイトショーや期間限定での上映も多いため、多くの人の目に触れることはないのだが、結構な数の作品が公開されている(このHPでも結構取り上げてきている)。この作品『サル』もそんな若手監督による作品である。
この作品が長編劇場デビュー作となる葉山陽一郎 監督はぴあフィルムフェスティバルへの入選を重ねた後、TVシリーズ「世にも奇妙な物語」、「奇跡体験アンビリーバボー」、「本当にあった怖い話」、アニメシリーズ「ちびまる子ちゃん」などの脚本家、Vシネマの監督として活躍してきた。1965年生まれなので決して若手とは言えないかもしれないが、この作品『サル』は若い感覚と今までの脚本などの経験がうまく合致したデビュー作となっている。
若い感覚と今までの経験とは主題の面白さである。この作品の主題は新薬認証のための人体実験である“治験”なのだ。最近は割のいいアルバイトのひとつとしてテレビや雑誌にも頻繁に取り上げられているし、ネット上での登録も可能になっているため、ほとんどの方がその内容は知っていると思うが、その実態を知る人はあまりいないのではないかと思う“治験”。その隠された部分から、都市伝説的なへんてこな噂も流れていたりもするその“治験”というものを監督が今まで手がけてきた「世にも奇妙な物語」、「本当にあった怖い話」などの手法で切り取った作品がこの『サル』なのである。
物語は自主映画の製作資金を稼ぐために“治験”のアルバイトに参加した5人の若者たちが隠くれて撮影していたデジタルビデオの映像を軸に展開していくという『ブレア・ウイッチ・プロジェクト』を思わせるようなスタイルを持って進んでいく。
出演は、『ロックンロール・ミシン』の水橋研二、『瀬戸内ムーンライトセレナーデ』の鳥羽潤、『ヴァイブレータ』の大森南朋、『渚のシンドバッド』の草野康太、『GO』の水川あさみ
など。
“治験”というものを監督自身の体験からリアルに捉えているであろうことはもちろんだが、そこに付きまとっている恐怖というものをこういう形で表現するかという意味でも面白い作品である。作品のおしまいに出てくるセンチメンタルさ加減には好き嫌いがあると思うが、テーマとしては圧倒的に面白い作品ですし、結構、リアリティーのあるわけの分からない怖さが伝わってきます(個人的にはきっちりと恐怖感を倍増させるように作り直して欲しいとも思うが)。ぜひ、劇場に足を運んでください。 |