「香港映画界のヒットメイカー
ジョニー・トー監督が放つ、人間臭さに溢れた警察群像ドラマの快作!」
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(C)2002
Mei Ah Film Production Co., Ltd. |
“韓流”という言葉も完全に定着した韓国映画の勢いなどアジア映画に大きな注目が集る中、アジア映画といえば、これだったのにという香港映画の勢いがちょっとなくなってきている気がする。それでも『インファナル・アフェア』シリーズや『少林サッカー』、『カンフー・ハッスル』のチャウ・シンチー、そして御大ジャッキー・チェンによる往年のファンを歓喜させた『香港国際警察/NEW
POLICE STORY』などここ数年で少しずつながらも香港映画界に活気が戻ってきているかなと感じさせる作品も公開されてきている。今回紹介する『PTU』もそういった香港映画の復活と質の高さを示すことになるであろう作品である。
物語はひとりの刑事がギャングとの小競り合いの末に、携帯していた拳銃を失くしてしまったことから始まる。どこにあるのか分からない、ギャングたちに取られたかもしれない拳銃探しを軸に、夜の香港の繁華街をパトロールするPTU(“Police
Tactical Unit”の略であり、いわゆる機動部隊を示しているという)、縦割りとなる警察組織、ギャングをはじめとする裏組織などを巻き込みながら結末へと進んでいくこの作品は、誰もが眠る香港の街の深夜を舞台に描かれる群像劇となっている。
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監督は『ザ・ミッション/非常の掟』、『暗戦
デッドエンド』、『マッスル・モンク』など数多くのヒット作を送り出している香港映画界の重鎮ジョニー・トー。この作品について、ジョニー・トー監督は「『PTU』は、香港に限らず世界のどこにでもありうるストーリーです。警察は、いうまでもなく人々に法律を守らせるのが仕事であり、自身も法を守らせる立場にある。でも実際の現場でそれを厳密に遂行することは難しく、法を犯してしまうこともある。また法を遵守するがゆえにチームの輪を崩してしまうこともある。容疑者との距離を保ちながら、一方でそれぞれの警察組織との距離も保たなくてはいけない。また自分が所属するチームの中の人間関係もある。この映画ではその微妙な距離感、人間関係が描かれています。また、警察組織は完全な縦社会です。まず最低限自分のセクションを守る。同僚のミスが発覚しても何とか均衡は保つようにする。その均衡が保たれることで、ルールは守られていくわけです。容疑者への過度な暴力など組織的な病は香港に限らずほかの国にもあるはずです。そういった問題点も含みながら、私が一番注目したのはチームワークの精神です。」と語っている。
監督だけでなく、製作など1年間に数本の映画に係わり続けるほど精力的なジョニー・トー監督だが、この作品『PTU』は作品の売りや派手さに欠けていたため、製作のための出資を募るのが難しく、他の作品を撮りながら資金を確保していくなど完成までに2年を要している(撮影は20日!)。しかし、本当に撮りたかった作品だからこそ、ジョニー・トー監督はその2年間を構想の手直しなど最高に有意義な形で利用している。その結果が、本国でのヒット、高い評価はもちろん、第23回香港電影金像奨
最優秀監督賞、第9回金紫荊奨 最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀脚本賞などをはじめとする各種受賞や第54回ベルリン国際映画祭など各地映画祭への出品へと結びついている。
出演は『トゥームレイダー2』でハリウッド・デビューも果たしたサイモン・ヤム、『ザ・ミッション/非常の掟』などジョニー・トー監督の作品では常連のラム・シュー、『暗戦
デッドエンド』のルビー・ウォンなど。
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夜中から明け方にかけての香港の繁華街の数時間が舞台となるこの作品は、そこに刑事による拳銃の紛失、殺人事件など様々な出来事が起こり、ひとつの道筋へと繋がっていく展開となっている。映画の冒頭の食堂でのテーブルを巡るやり取りのシーン、血みどろの殺人シーン、携帯電話などの小道具の使い方など「さすがだねえ」と思わせるシーンも多いのだが、この作品を何よりも魅力的にしているのは登場人物たちの人間臭さである。それはジョニー・トー監督が語るチームワークの精神から生まれる人間臭さであり、警察組織という枠を超え、黒社会にまで波及する。警察組織も黒社会も敵対しながらもお互いを利用する、そういう人間臭さだ。もちろん、そんな人間臭さを屁とも感じず、毛嫌いするパーフェクトを目指す人間もいるわけだ。でも、そういった人間までが人間臭さを漂わせ始める。この作品の魅力はそういった人間臭さが生み出す一夜のドラマにある。
もちろん、笑い、アクション、バイオレンスの要素もあるが、香港映画だからとその部分のみに期待したら、肩透かしを食ってしまう作品かもしれない。でも、往年の刑事、警察ドラマ、警察小説のような人間臭さに満ちたドラマが味わいたといと思うのなら、この作品『PTU』を絶対的にお勧めする。広角のレンズを多用した夜の香港の繁華街に迷い込み、登場人物のたちの人間臭さと物語の行き先にのめりこむことは間違いないはずだ。香港映画ファンはもちろん、香港映画初心者やミステリー小説好きにも味わってもらいたい快作。ぜひ、劇場に足を運んでください。
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