「日本を代表する撮影監督
岡崎宏三の軌跡」
当たり前のことだが、どんな映画を観るかの基準は人それぞれである。作品の内容に惹かれたり、人づてにいい評判を聞いていたり、出演者や監督が好きだったり。多少マニアックになるとその作品の配給会社や製作会社が好きだったり、脚本家などのスタッフに興味があるからだったりすると思う。今回取り上げる『撮影監督・岡崎宏三の軌跡U』はあまりこの視点で映画を観る人はいないであろうという撮影監督
岡崎宏三という人物に焦点を当てた回顧上映の第2弾である。
ほとんどの人がご存じないと思うので、岡崎宏三のプロフィールを簡単に紹介しておこう。1919年東京に生まれる。16歳の時に新興シネマ大泉撮影所に撮影助手として入社。1940年『愛の記念日』で一本立ち。その後、ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督、川島雄三、豊田四郎、小林正樹、五社英雄など錚々たる監督たちと作品を作り上げてきた。今もなお、作品に関わり続け、アフガニスタンで撮影してきた最新作『アイ・ラブ・ピース』は148本目の作品となる。代表作に『アナタハン』(ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督)、『化石』(小林正樹監督)、『御用金』(五社英雄監督)、『ザ・ヤクザ』(シドニー・ポラック監督)、『六篠ゆきやま袖』(松山善三監督)など。 そう、岡崎宏三という人は、戦前から映画にカメラマンとして関わり続け、80歳を超えた今も撮影を続けるとんでもない人なのである。そして、彼の撮影した作品のジャンルは、ドラマはもちろん、ドキュメンタリー、アクション、喜劇、ミュージカル、時代劇とカバーしてない分野はないのではないかというほど幅広い。今回のような形で彼の作品を観るということは日本映画の歴史を観るということでもあり、なぜ、岡崎宏三という人がかくも長く撮影監督として映画を取り続けることが出来たのかということを体感することでもあるのだ。そして、それは岡崎宏三の感性や才能を体感することなのだ。
岡崎宏三はこの回顧上映のパンフレットで「(映画人を目指す若者たちは)基礎を勉強するために古いものから新しいものまで映画をみてほしい」と語っている。そういった意味では今回の上映はまたとない機会であるし、日本映画はこんなにも面白いのかと感じるにもまたとない機会となっている。集中して観るも良し、ピックアップして観るも良し、『御用金』など面白い作品が目白押しです。ぜひ、劇場に足を運んでください。
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