「映画監督
中平康の全貌」
1950年代、1960年代という日本映画の全盛期。その時代を代表する作品、監督などをあげてくださいと尋ねられれば、色々な意見が出てくると思う。そんな時代を代表する監督として、近年、大きな評価を得ているのが中平康である。今回紹介する『中平康レトロスペクティヴ
-映画をデザインした先駆的監督-』は今までにも何度か行われてきた彼の作品の回顧上映としては最大、最高のものである。上映される作品は彼の残したほとんどの全てを網羅している全43本。日本でのフィルムだけでなく、香港のショウ・ブラザーズでヤン・スーシー名義で撮った4本中2本のフィルムも公開される。
中平康を知らない方のために説明すると、1926年生まれ、1948年に松竹に入社、1956年に日活に移籍し、1956年に監督に昇格。石原慎太郎 原作、脚本、石原裕次郎、北原三枝主演の『狂った果実』で一躍、新世代の監督のトップに躍り出る。その後、『月曜日のユカ』、『黒い賭博士』、『傷だらけの純情』、『危いことなら銭になる』、『あいつと私』などコメディー、アクション、青春と数多くのジャンルの映画を縦横無尽に撮り続ける。日活を解雇され、1971年に中平プロダクションを設立。『闇の中の魑魅魍魎』はカンヌ映画祭コンペティション部門に選出される。1978年
胃がんのため死去。
中平康の作品の魅力を一言で表せば、今観ても新鮮であるということだろう。映像はモダンでスタイリッシュ、展開はスピーディーなのだ。中平監督自身が映画に求め続けたものは「スタイル」と「テクニック」であった。それは当時の日本映画界においてはあきらかに異端(例えば、鈴木清順、ある時期の今村昌平などもいるが)であったという。そして、そんな彼の作風がきちんと評価され始めたのも、一部の作品を除き、実はつい最近なのだ。
この『中平康レトロスペクティヴ -映画をデザインした先駆的監督-』は数日ごとにメニューが変えられて公開されるので注目の作品がどかどかと登場してくる。
中平康、往年の日活映画が好きな方はもちろん、日本にこんな映画があったのかというのを確認するためにも劇場に足を運んでください。面白いですから! |