『ラブドガン』
配給:リトル・モア
オフィシャルサイト:
http://www.lovedgun.com/
永瀬正敏
宮崎あおい
新井浩文
岸部一徳
田辺誠一
野村宏伸
荒戸源次郎
伊佐山ひろ子
土屋久美子
川合千春
飯田孝男
水上竜士
猫穴善五郎
監督、脚本:渡辺謙作
製作:孫家邦
石川富康
尾越浩文
撮影:安田圭
照明:上田なりゆき
美術:吉村桂
衣装:野中美貴
音楽:Dhal
2004年/35ミリ/カラー/ヴィスタサイズ/DTSステレオ/1時間51分
「主演 永瀬正敏、宮崎あおい、岸部一徳、新井浩文。“鈴木清順”の弟子 渡辺謙作監督の美学が貫かれた作品」
雑誌リトル・モアと若手の作品を精力的に配給し続けるテアトル新宿がタッグを組んだ“リトルモアMOVIES”という意欲的な企画があった(98年から99年にかけての1年間、3ヶ月ごとのレイトショーで4人の新人監督のデビュー作品を公開。ここから輩出された監督には『青い春』、『ナイン・ソウルズ』の豊田利晃がいる)。その企画の1本目として公開されたのが、渡辺謙作監督の『プープーの物語』であった。今回紹介する作品はその渡辺謙作監督の5年ぶりの監督作品『ラブドガン』である。
上原さくらと松尾れい子主演のふたりの女の子の奇妙で不思議なロード・ムービー『プープーの物語』はその内容の奇抜さから賛否両論が出た作品であった。今回の作品『ラブドガン』のテーマは『プープーの物語』とは全く違うのだが、この作品も賛否両論が渦巻くんだろうなと感じさせる内容になっている。
物語は、幼い頃に両親を殺され、その復讐を遂げるため彷徨い続けている若い殺し屋。両親を亡くした彼を引き取り、育て上げ、今度は彼を殺す立場になった師匠ともいうべき殺し屋。親分を殺された敵討ちのために若い殺し屋を追い続ける組のチンピラ。突然、両親を失い、深い喪失感の中にいる少女という人物を軸に展開していく。この軸となる役を演じるのは、彷徨い続けている若い殺し屋役に永瀬正敏、彼を育て、追う立場となった殺し屋役に岸部一徳、チンピラ役に新井浩文、両親を失い喪失感の中にいる宮崎あおいという日本の映画界には欠かせない新旧の俳優たちである。静と優しさを兼ね備えた表情の永瀬正敏、人生を達観した飄々とした風情の岸部一徳、若さゆえのいきがりと成長を表現する新井浩文、そして深い喪失感から立ち直っていく宮崎あおい、この4人が持つ俳優としての力量、深さを示した演技は、作品に最高の味わいを加えている。渡辺監督はこの作品のアイデアとして“男3人、女1人、老若男女の設定”ということを真っ先に考えていたという。そんなキャスティングに対するいちばんのこだわりについて「全員が本業の役者であること。逃げ道がないというか、プロとしてやっている人たちと仕事がしたかった。」と渡辺監督は語っている。そういった点では、俳優たちは監督の期待に対して、十二分に応えているといえるだろう。そのほかの出演者は、野村宏伸(びっくりするくらい変な役です)、田辺誠一、荒戸源次郎など。
この作品『ラブドガン』のテーマに関しては「愛」と笑いながら茶化すように話している渡辺監督だが、「テーマがあると作りやすいから一応置いてある、という程度なので、実際はテーマなんかなんでもいいし、伝わらなければ伝わらないでいいんです。ただ、方法論として言えば、僕のやりたいことはリアルとアンチリアルの対比というか、そのふたつの世界をどうミックスできるかということになるのかな。」と語っている。“リアルとアンチリアルのミックス”とは、渡辺監督にとってはあくまで自分の中での要素であって、この作品を観て、私たちが感じる要素とは違う部分もあるという。ただ、鈴木清順監督の作品に参加することで、映画界でのキャリアをスタートさせた“鈴木清順の弟子”ともいわれる渡辺監督の物語の中、映像の中にも現れている表現方法を、鈴木清順監督の流れを汲んだ渡辺監督流の“美学”と言っても差し支えないだろう。
唐突に亀や鋏が登場したり、話がダブったりと監督が語るアンチリアルとも取れる部分が色々と挿入されているが、物語自体は余分なものをそぎ落としたかのようなシンプルさを持ち、軽快に面白さを散りばめながら展開していくので、役者の演技や監督の映像表現を存分に楽しめるものとなっている(ただ、その“美学”自体をわずらわしいと感じる向きにはダメな作品なんだろう)。映像だけではなく、物語の肝ともいえる弾丸の話、男たちの運命、少女の決断など渡辺監督流の徹底した“美学”と役者たちの味わいが絶妙にかみ合った作品『ラブドガン』。出演している役者のファンはもちろん必見ですが、鈴木清順監督の作品が好きな人や新しい日本映画の流れをチェックしたい人、毛色の変わった面白い作品が観たいと思っている人等々、ぜひ、劇場に足を運んでください。
「義理の親子ともいうべき殺し屋、チンピラ、両親を亡くした少女の運命の物語」
夜明け間近の海岸沿いの道を猛スピードで走っていく軽トラック。そのトラックは自動販売機に激突してしまう。そこから降りてくる一人の男。彼は傷を負った額を冷やすために軽トラックに積まれていた魚を額に押し当て、歩き続ける。男の名は葉山田、腕利きの殺し屋である。彼はひとつの復讐を果たし、最後の復讐を果たすために逃げている最中であった。
幼い頃に両親を失った葉山田の育ての親 丸山も殺し屋であった。その彼に仕事の依頼が舞い込む。それは門脇組の組長を殺した葉山田を殺せというものであった。こういう日がやってくることを分かっていた丸山は、門脇組のいきがるだけの若造 種田と共に葉山田を追う旅に出る。
女子高生の小諸観幸は、突然両親を亡くし、天涯孤独の身となっていた。この日、彼女は高校を中退したいと担任の教師に告げたところだった。両親の死にやりきれないものを抱えている彼女はスクーターに飛び乗り、堤防で時間をつぶし、再び移動しようとしたときに、「スクーターを貸して欲しい」とハンドルを掴まれる。それは傷を負った葉山田だった。頑としてスクーターを貸そうとしない彼女に対し、葉山田は赤い銃を突きつける。銃の名前は“アキラ”、それは亡くなった父親の形見であり、自らの分身のような銃であった。
葉山田と彼を追う丸山、種田、そして観幸。彼らには必然としかいえない運命が待ち受けていた。
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