「日本映画を代表する監督
小林正樹の足跡を回顧する企画上映」
成瀬巳喜男、深作欣二、山中貞雄、川島雄三、沢島忠といった日本映画を代表する監督たちや撮影監督である宮川一夫の特集上映を行ってきた三百人劇場映画講座。その第15弾が開催されることになった。今回、スポットが当てられるのは、やはり日本映画界を代表する監督
小林正樹である。今回紹介する企画イベントはそんな小林正樹監督の足跡を回顧する『三百人劇場映画講座VOL.15
巨星 小林正樹の世界』である
小林正樹監督は『切腹』、『怪談』で1963年と1965年のカンヌ国際映画祭 審査員特別賞、『上意討ち 拝領妻始末』では1967年ヴェネチア国際映画祭
国際映画評論家連盟賞、『人間の條件』シリーズでは1960年ヴェネチア国際映画祭 サン・ジョルジョ賞を受賞するなど、黒澤明などと並び、世界で大きな評価を獲得した日本人監督であった。
1916年北海道の小樽に生まれた小林正樹は、1941年に松竹大船撮影所助監督部門に入社するが、戦争という時代背景からそのまま戦地へ。1946年に松竹に復職し、ほぼ同世代になる木下恵介監督(小林監督が最も敬愛した人物でもある)に師事する。映画監督デビューは1952年の中篇作品『息子の青春』、翌1953年に初の長編作品『まごころ』を完成させている。その後、数々の傑作や野心作を送り出し、1996年に80歳で亡くなっている。
小林正樹監督は、同世代ということで語られる監督たち(木下恵介、新藤兼人、市川崑、野村芳太郎、川島雄三、黒澤明など)に比べると生涯に残した監督作品は非常に少ない。その理由は、監督としてのデビューが遅かったこと、細部にこだわり、自分の撮りたい題材だけを撮るという作品に対する完璧主義な姿勢による部分が大きい。プログラム・ピクチャー全盛期の時代にそういった姿勢を貫いた小林正樹の作品は、だからこそ、世界から認められ、今という時代に観ても何か得るものがあるはずである。
今回、『三百人劇場映画講座VOL.15 巨星 小林正樹の世界』で上映される作品は、彼が残した全22作の監督作品の中から選びぬかれた代表作17作品である。小林監督の名を世界的に知らしめた五味川純平のベストセラー小説の映画化『人間の條件』シリーズ、カンヌ、ヴェネチアで受賞した『切腹』、『怪談』、『上意討ち 拝領妻始末』はもちろん、長編デビュー作である『まごころ』、阿部公房が脚本を担当した『壁あつき部屋』、テレビシリーズを映画に再構築した『化石』など初期から後期までの彼の作品を網羅したラインナップとなっている。そういった様々な作品が上映される中で今回の最大の売り物は、8月15日に観る『東京裁判』(1985年ベルリン国際映画祭
国際評論家連盟賞 受賞)ではないだろうか。日付に非常に大きな意味があるとは思えないが、テロ、イラクへの派兵などこういった時代にこの長大なドキュメンタリー作品をスクリーンで観るというのは多少なりとも意義があることだと思う。
名画座が無くなりつつあり、独自の企画上映も少なくなりつつある中で、こういった形でテーマに沿った作品をまとめて観ることが出来る機会は本当に貴重です。小林正樹を知る世代も、知らないけれども興味を抱いた方も、ぜひ、劇場に足を運んでください。本当に面白いですから。 |