「香港映画の真髄を知らしめたノワール作品『インファナル・アフェア』。前作以上の密度を持った第2章『インファナル・アフェア
無間序曲』登場!」
傍から見ても低迷が続いていたと感じざるえなかった香港映画(これは香港の経済や政治の動向とも関係があるのだろうけれども)。その香港映画復活の狼煙をあげたともいうべき作品『インファナル・アフェア』。香港では記録的な興行収入と数々の映画賞を受賞、ここ日本でも多くのファンに支持され、新たな香港映画のファンを取り込んだといってもいいこの作品(ちなみにこのHPで募集した“2003年最高の映画ベスト20”でも第4位にランクインしていました)の第2章が公開される。それが今回紹介する作品『インファナル・アフェア
無間序曲』である。
この作品『インファナル・アフェア 無間序曲』が描くのは、『インファナル・アフェア』の中でも描かれていたマフィアへの潜入捜査官ヤンと逆にマフィアから警察に送り込まれたラウ、彼らを取り巻くボスたちの過去の物語である。
製作開始時から大きな話題となっていた『インファナル・アフェア』。元々はこの第2章に当たる『インファナル・アフェア
無間序曲』の製作の予定はなく、日本では来年のゴールデンウィークに公開が予定されている最終章に当たる『インファナル・アフェア
終曲無間』との2部構成での製作が予定されていたのだという。共同監督のアラン・マックは「『インファナル・アフェア』3部作は、独立した3つの物語ではなく、結末を持ったひとつの物語が巡りめぐって振り出しに戻るというスタイルになっています。私たちが当初から考えていたのは第1章と第3章だけで、両方の脚本を同時に執筆していました。ところが、第1章の撮影中に、過去にさかのぼってはどうかという提案があったのです。私たちは観客がすでに知っている物語を書くなんて、そんな難しいことは出来ないと躊躇しました。しかし、筋よりもむしろ登場人物たちに焦点を当てて掘り下げ、10年前の彼らが一体どんな人物だったのかを描こうと決心しました。」と語っている。『インファナル・アフェア』の脚本自体(そして同時進行していたという『インファナル・アフェア
終曲無間』もだろうが)、リサーチから3年もの歳月をかけて完成させているだけに、その苦労は並大抵ではなかったのではないかと思われる。実際、1990年代前半から返還となる1997年までを描いたこの作品では、時代考証(当時の衣装などのリサーチや再現)に多大な苦労を要したという。ちなみにこの作品も第1章と同様に、大ヒットを記録し、2004年香港電影評論学会大奨
最優秀作品賞などを受賞している。
出演は、第1章ではトニー・レオンが演じていた潜入捜査官のヤン役にショーン・ユー、アンディーラウが演じていたマフィアから警察に送り込まれたラウ役にエディソン・チャン。第1章にも出演していたヤンの上司役にアンソニー・ウォン、ラウのボス役にエリック・ツァン。その他、カリーナ・ラウ、フランシス・ンなど。監督はアンドリュー・ラウとアラン・マック。その他の主要スタッフも第1章と同じ顔ぶれが揃っている。
第1章で香港映画の奥深さ、そのドラマの内容にどっぷりとはまり込んだ方も多いと思う(私自身もそんなひとりだった)。で、この第2章『インファナル・アフェア
無間序曲』だが、個人的な感想は完全に第1章を超えてしまった。第1章は素晴らしかったが、あれは序曲にすぎなかったのかというくらいの濃密な人間ドラマがそこには展開されている。この第2章では、潜入捜査官となるヤンと警察に送り込まれるラウ以上に黒社会の中で成り上がっていくサム、警察の中で立場を固めていくウォン警部に大きな比重が置かれている。1991年には下っ端のヤクザでしかなかったサムがどのように成り上がっていくのか、ウォン警部は警察の中でどのように立場を固めていくのか、そしてヤンとラウはどのような経緯でスパイとなり、潜入を果たしていくのかなど第1章でモノクロームの映像で描かれていた部分も含めての過去10年間が明らかになっていくのだ。その展開はスリリングで、この上なく濃密。これぞ“ノワール”というべき世界である。もちろん、第1章を観ていれば、そういった部分も存分に楽しめるが、第1章を観ずともこの濃密さは間違いなく観る側を虜し、最終章の登場を心待ちにしてしまうはずである。『インファナル・アフェア』3部作は『ゴッドファーザー』シリーズに勝るとも劣らない出来のシリーズになるのではないだろうか。そういった期待すら抱かせて終るこの作品『インファナル・アフェア
無間序曲』。ぜひ、劇場でその濃密さ、黒さを味わってください。 |