「カルト的な人気のホラー漫画家
日野日出志の世界を新鋭監督たちが映像化!」
ホラー漫画の映画化といえば、伊藤潤二の『富江』、『うずまき』、古賀新一の『エコエコアザラク』、楳図かずおの『漂流教室』などが思い浮かぶ。そして、漫画(コミック)の映画化(これはコミックに限られたことでもないのだが)はどうしても原作のイメージに引きずられてしまうのも事実である。原作があまりにも有名すぎたり、インパクトが強すぎるとそうしたイメージをどう受け止めるのか、裏切るのかが間違いなく難しい部分となってくる。今回紹介する作品『日野日出志のザ・ホラー怪奇劇場〜第一夜〜』はそんな原作の持つイメージ、インパクトが大きすぎる日野日出志のホラー漫画を映画化した作品である。
日野日出志といってもご存じない方が多いと思うので、簡単にプロフィールを紹介しておきたい。日野日出志、1946年満州に生まれる。1967年「つめたい汗」で漫画家としてデビュー。以降、雑誌「ガロ」、「少年画報」、「少年サンデー」などを中心に「どろ人形」、「蔵六の奇病」、「地獄変」、「蝶の家」などの数多くのホラー、怪奇漫画を発表し、その第一人者としての地位とカルト的な人気を確立する。人気は日本だけにとどまらず、海外でも作品が英訳され、発売されている。漫画だけではなく、ホラービデオの製作にも意欲的で『ギニービック2血肉の華』などの作品も監督している。こんなプロフィールでは伝わる部分も少ないと思うが、とにかく独自の味わいを持ったホラー(を得意とする)漫画家ということを分かってもらえればと思う。実際、小学生の頃に回し読みした彼の作品の強烈な絵(と物語のグロさ)が未だに頭の中から離れていない人も多いだろう。そんな日野日出志の作品の映像化は、今までに何度も試みられたが、結局は全て頓挫してしまったという。それもこれも彼の作品が持つ強烈なインパクトゆえである。
今回、そんな強烈なインパクトを持つ日野日出志の作品から選ばれた6本が6人の新鋭監督により映画化された。『日野日出志のザ・ホラー怪奇劇場〜第一夜〜』ではそのうち3作が公開される(残りの3作は後日『日野日出志のザ・ホラー怪奇劇場〜第二夜〜』として公開されることが決定している)。今回公開される作品は、『映画番長第1弾ワラ(^O^)番長』シリーズの1本『独立少女愚連隊』の安里麻里監督による『地獄小僧』、『ほんとにあった!呪いのビデオ』シリーズの監督や『仄暗い水の底から』、『クイール』などの作品に脚本としてかかわっている中村義洋監督による『わたしの赤ちゃん』、『呪霊
劇場版 黒呪霊』、『ほんとにあった!呪いのビデオ』シリーズの白石晃司監督による『怪奇!死人少女』の3本。出演は『地獄小僧』には山本未来、津田寛治、『わたしの赤ちゃん』には有坂来瞳、池内万作、『怪奇!死人少女』には前田綾花など。
先にも書いた通り、日野日出志の作品の強烈なインパクトをどのような形で映画化しているのかが彼の作品を知る者にとって、知らない者にとってはホラーとして楽しめるかが、この『日野日出志のザ・ホラー怪奇劇場』の面白さの大きなポイントとなるはずだ。どれもデジタルビデオ撮影による予算(もちろん時間も)の限られた作品なのだが、日野日出志の強烈なインパクトの源である絵、ビジュアルを前面に押し出そうとした『地獄小僧』、劇中劇という体裁をとった『わたしの赤ちゃん』、日野日出志の作品の物語性を前面に押し出した『怪奇!死人少女』とどの作品にもそれぞれの色合いが表れていて面白い。日野日出志の作品のビジュアルを徹底的に再現しようとした『地獄小僧』には背景自体から笑ってしまう部分もあるのだが(これは『わたしの赤ちゃん』も同様)、こういうやり方もありだろうなと感じさせる。そして、怖さ、悲しさ、不可思議さが同居していて秀逸なのが『怪奇!死人少女』である。モノクロの映像の中、体が腐っていく少女の悲しみと恐怖をうまく表現していて、しかもおどろおどろしくてとこれはなかなかの出来。個人的には3本の中で一番のお勧めです。三者三様の世界観がある今回の作品、低予算ながらもなかなかの味わいがありますし、『第二夜』も期待できるのではと感じさせます。レイトショー公開ですので、秋の夜長にぜひ、これらの作品を楽しんでください。 |