ブッシュJrの再選で終った2004年のアメリカ大統領選挙。日本のメデイアが伝えたほどに反ブッシュの風は吹かなかった、イラクの影響は大きくなかったという見方も出来るだろうが、これまでにないほど多くの人々が反ブッシュに立ち上がったのも事実である。そういった文脈の中にはマイケル・ムーアの作品『華氏911』があり、ブルース・スプリングスティーン、REMなどが企画・参加したコンサート・ツアー“VOTE
FOR CHANGE”というものもあった。このマイケル・ムーアの『華氏911』の主題歌にも使用され、“VOTE
FOR CHANGE”にも度々飛び入りで参加したミュージシャンがニール・ヤングである。今回紹介する作品『ニール・ヤング/グリーンデイル』は彼自身が監督も務めているアメリカの縮図を描いたような作品である。
ロックファンなら誰もが知っているであろうニール・ヤングというミュージシャンだが、映画ファンの中には知らない人も多いかもしれないので、簡単にプロフィールを書いておきたい。ニール・ヤングは1945年カナダのトロントに生まれている。1967年にバッファロー・スプリングフィールドの中心メンバーとしてレコード・デビュー。スティーブン・スティルス、リッチ・フューレイ、ジム・メッシーナなどを要した彼らのサウンドは当時の空気を反映した実験的なもので、後々のバンドに大きな影響を及ぼす。日本では、はっぴいえんども彼らの影響を受けている。バンド解散後にソロ・デビュー。オリジナルなギター・ワークと声、繊細な内容の曲で「Harvest」、「After
the Gold Rush」などの傑作アルバムを発表する。ソロ活動と並行して、スティーブン・スティルスなどによるグループ
C.S.N&Y(クロスビー、スティルス、ナッシュ アンド ヤング)にも参加。「Deja
Vu」という傑作アルバムを残す。その後、現在まで幾多の苦難を乗り越え、ソロ活動を続ける。特にパンク・ロック全盛期に彼らへの賛意をもって発表された「Rust
Never Sleeps」は後のグランジ・ロックの世代にまで連なる賞賛を獲得し、グランジの元祖的な祭り上げられ方もしている。彼らの音楽、道程を捉えたドキュメンタリー映画として、ジム・ジャームッシュ監督による『イヤー・オブ・ザ・ホース』がある。