「子供も大人も楽しめる、世界中でベストセラーとなった児童ファンタジー「世にも不幸な出来事」の映画化作品」
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Francois
Duhamel.TM &(C)2004 DreamWorks,
LLC and Paramount Pictures. All Rights
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『ハリー・ポッター』シリーズ、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ、そして、この年末に公開される『ナルニア国ものがたり』などファンタジー映画、小説の世界にはまりまくっている方も多いのではないだろうか。そんな方々にとっては公開が待ち遠しかったであろう作品が公開される。それが今回紹介する作品『レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語』である。
アメリカでは昨年(2004)末に公開され、初登場でNO.1を獲得。今年(2005)のアカデミー賞ではメーキャップ賞、美術賞、衣装デザイン賞、作曲賞の4部門にノミネート、見事にメーキャップ賞を受賞している。このノミネートからも分かるようにこの『レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語』はストーリー展開ももちろんだが、ファンタジー作品の楽しみのひとつであるセット、メイク、衣装などが本当に魅了されるほど素晴らしい仕上がりとなっている作品である。
この作品『レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語』は児童ファンタジー「世にも不幸な出来事」シリーズを映画化したもの。「世にも不幸な出来事」シリーズが面白いのはハッピーなファンタジーではなく、不幸なファンタジーを書いていることだろう。物語の主人公は火事により両親を亡くし、孤児となった三姉弟妹。それだけでも不幸なのに、彼らの持つ遺産などを巡り、更なる不幸が襲い掛かるというこの児童ファンタジーは1999年に第1巻が発売されると評判が評判を呼び、瞬く間にベストセラーとなった。シリーズ自体は13巻で完結するということで、この13という数字も正に不幸な出来事に打ってつけである(しかも各巻は13章で構成されている。現在、アメリカでは第11巻、日本では8巻まで刊行されている)。作者のレモニー・スニケットはありきたりのハッピーエンドの話は書きたくなかったことから、このシリーズを思いついたようだが、「世にも不幸な出来事」というタイトルとは裏腹の子供や親の心をくすぐる仕掛けと冒険に満ちた内容となっているのが、この作品の最大の魅力である(未読の方はぜひ!)。
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このちょっとひねくれた児童ファンタジー・シリーズの映画化が動き始めたのは、原作の出版直前だった。原作の第3巻までのゲラを読んだ製作会社のスタッフたちはこのずるくてめちゃくちゃなユーモアに溢れる物語に魅了され、すぐさま映画化権利を獲得。そして最高の映画を生み出すために、最高のキャストと最高のスタッフのスタッフを集結させた。ちなみに、原作者であるレモニー・スニケットは「映画化はやめてくれ。優れた監督は使わないでくれ。演技のうまい役者を出演させないでくれ。シリーズのどれも原作にしないでくれ。映画を見に行かないでくれ。」と懇願したらしいが、彼の期待はすべて見事に裏切られる結果となってしまった。
主演は、主人公となる三姉弟妹を演じる『ゴーストシップ』のエミリー・ブラウニング、『ロード・トゥ・パーディション』のリアム・エイケン、わずか1歳での映画デビューとなった双子のカラ&シェルビー・ホフマン(2人1役)、彼らの財産をもぎ取ろうとする叔父さん役のジム・キャリー。その他、メリル・ストリープ、ティモシー・スポール、キャサリン・オハラ、ジェニファー・クーリッジなど。また、原作でも突然登場してくるナレータとして、ジュード・ロウが声のみで出演している。監督は『ムーンライト・マイル』のブラッド・シルバーリング。脚本は『ギャラクシー・クエスト』のロバート・ゴードン、撮影に『スリーピーフォロー』のエマニュエル・ルベッキ、プロダクション・デザインにティム・バートン、コーエン兄弟の作品でお馴染みのリック・ハインリスクなどが集結した。
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監督のブラッド・シルバーリングはこの作品の映画化に際し「この本は反逆的で、危険も顧みない。だから映画でもその姿勢で思い切ってぶつかった」と語っているが、製作スタッフが第一に考えたことも、原作の持つ雰囲気をいかに忠実に構築していくかであったという。とにかく、そういった意気込みが最も結集したであろうプロダクション・デザインと全体を覆う暗い雰囲気作りが圧倒的な作品である。オープニングでちょっとディズニー的なハッピーな森のアニメーション(エンディングのアニメーションも素晴らしい)が出てきたかと思ったら、「こんなハッピーな物語を期待している人は今すぐ出てくれ。これから話すのは世にも不幸な物語なのだから」というナレーションがかぶり、どーんと暗い街の中へと入り込んでいく。この辺りがファンタジー。不幸と謳っているが、その後の物語の展開はやはり児童ファンタジー的な冒険譚となっていくわけで、この辺りはファミリー向けかなとも感じるのだが、三姉弟妹のキャラクターの面白さ、1人3役を演じるジム・キャリーらしさ、よくこんな役をやったなというメリル・ストリープ(娘が原作のファンだったとか)など役者陣も好演で、笑い、ちょっとドキドキと楽しみながら観ることができた。個人的には子供と一緒に観て、その後に作り話でもしたくなる作品だ(それ位楽しめる)。そして、この作品『レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語』は原作の1巻から3巻を映像化したものなので、間違いなくこの続編もあるはず。この調子で制作してくれるなら、新たなファミリー向けのファンタジーの秀作となりそうな気もする。ぜひ、映像と物語の楽しさを味わうために劇場に足を運んでください。 |