「従来の映画様式とは異なる、全く新しいタイプの映画」
『イブ』には冒頭に何度か出てくる赤ちゃんの鳴き声以外、セリフは一切ない。この映画が劇場デビュー作となるニール・セント・クレア監督が「このフィルムは、そもそも夢からスタートした。だから映像も夢の世界に近付けたかった。目指したのは、ピースフルで瞑想的なイメージと音楽の融合。」と語っているように、映画は北米やカリブなど60ヶ所以上に及ぶロケーションで撮影された美しい自然の映像と、全編を通して流れるディープ・フォレストやモービーを始めとする新世代のヒーリング系ミュージシャンの音楽、センテンスごとに挿入されるブッダやガンジーなどの示唆に富む言葉、そしてイブ役の元ミス・ノルウェーのインガー・エベルトフトの夢と現実が織り成したような旅で綴られていく。ストーリーは存在しているが、それがメインではない。どちらかといえば、観客がそこに現れる映像や言葉を自由に感じ、そこに自身の経験を組み合わせたりしながら作り上げていくような話であろう。だから、気分によっても受け止め方に大きな差が生じてくると思う。きっと、今見た状態と明日の状態でも違った結果が出るだろう。そんな従来の映画様式とは異なる、全く新しいタイプのこの作品をぜひ劇場で体感して欲しい。
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