「「トリック」の堤幸彦監督と映像作家
原田大三郎がコンビを組んだ幻の怪獣映画が遂に公開」
「トリック」、「池袋ウエストゲートパーク」、「ケイゾク」、「金田一少年の事件簿」というヒット・ドラマを生み出し、『溺れる魚』、『トリック-劇場版-』、『恋愛寫眞 Collage
of Our Life』、『2LDK』など映画監督、舞台の演出家としても活躍する堤幸彦。80年代にビデオ・パフォーマンスユニット“RADICAL
TV”を結成し、立花ハジメ、坂本龍一らとのコラボレーション、映画、TV、CMなどの分野だ活躍してきた映像作家
原田大三郎。このふたりがタッグを組んだ幻の作品が、遂に公開される。それが今回紹介する作品『EGG』である。
この作品『EGG』が制作されたのは2002年。その年に開催された東京国際ファンタスティック映画祭のプログラムのひとつであった“《Jシネマ》決闘!堤幸彦
VS 北村龍平”で上映され、なぜかそのままお蔵入りとなってしまった幻の作品である。お蔵入りしたのにはそれなりの理由があるのだろうが、たった1回しか上映されることがなかったこの作品はマニアの間では知る人ぞ知る作品として語り継がれていたのだという(私は知りませんでした)。そんな作品の封印(?)が今回、ついに解かれることになったのだ。これはちょっと見逃せない気分になってくるでしょう。
TVドラマを中心に数々のヒット作を生み出し、多くのファンを抱える堤幸彦監督と映像作家として80年代から第一線で活躍してきた原田大三郎。このふたりは監督
堤幸彦、VFXディレクター 原田大三郎という形で『恋愛寫眞 Collage
of Our Life』でもコンビを組んでいるが、そのきっかけとなった、最初のコンビ作となったのが、この『EGG』なのである。
始まりは一昔前のロシア。卵の絵ばかりを描いている娘に業を煮やした母親は射殺する。なぜ、娘を射殺しなければならなかったのかという謎を残しながら、舞台は現代の日本へと移り変わる。ここに暮らす女性
月子は幼い頃から目を閉じると卵が見えるという現象に悩まされていた。ある日、その卵にひびが入り、孵化が始るという物語のこの作品、堤流ともいうべき一風変わった怪獣(モンスター)作品となっている。
主演はミス・コリアの栄冠に輝いたチョ・ヘヨン。その他、堤作品の常連ともいうべき、氏家恵、佐藤二朗、犬山イヌコなどが出演している。
最初に女の子が卵の絵を描いているときは、ウルトラマンにもあったようにこの子が想像で描いたものが実物として成長していくんだろうななどと思っていたのだが、自分の体の中に自分しか見ることが出来ず、感じることも出来ない怪獣(モンスター)がいるという設定なんだと分かった時点で完全にやられた作品だった。自分の中に巣食う悪魔などという設定はよくあるし、それは自分以外の人間にも確認できる形で表出してくる。でも、この怪獣は自分しか確認できないんだもんね。怪獣に内面から痛めつけられる肉体の過酷な状況を転げ周り、飛び跳ね演技するチョ・ヘヨンはよくぞこんな役をやったよなと感じるほどの熱演。VFXで描かれる怪獣も結構グロくていい感じ。堤監督はこの作品の公開を喜びながらも、自身の中では実験映画的な位置づけにしているみたいだけど、そんなことはなく十分にエンタティンメント。予算が限られている分、壮大なものを期待すると肩透かしを食うかもしれないが、相当に面白いB・C級の作品に仕上がっている。じゃ、なんでお蔵入りをしていたのだろうと考えると売りがなかったんだろうなという感じですね。面白くても売りがなければ劇場ではかからない(ヒットしない)ということなんですね。でも、この作品は楽しめますんで、ぜひ、劇場に足を運んでください。
|