「 私は常に別の人間を演じるというのはどういうことなのか、自問自答しているんだ。つまり、もし自分がジェラール・ジュニョではなくて、警官であったり、ホームレスであったり、今回に限っていえば、戦時中の一介の商人であったりした場合、どんな風に反応するかということを考える。私は、広く言えば歴史全般に惹かれるし、特にこの時代に惹かれるんだ。」監督・製作・脚本・出演と4役をこなしたジェラール・ジュニョはそう語る。ユダヤ人の子供と反ユダヤ的なフランス人との交流はクロード・ベリの“Le
Vieil Homme et l'enfant(老人と子供)”などですでに扱われてきたが、本作品で注目すべきところは反ユダヤ思考、迫害に対する受身な姿勢、迫害された者の財産を得て喜んでいる姿…といったいわゆる当時ごく普通に存在したフランス国民像を描いているところである。監督のジェラール・ジュニョは実際に戦時中に肉屋を営んでいた祖父をモデルに描いたと言う。彼は喜劇演劇集団“スプランディド”のメンバーとして注目を集め、『タンデム』等パトリス・ルコント作品の常連であった。監督としても活躍しており、『パリの天使たち』等過去に7作品を手掛けている。子役シモンを演じるジュール・シトリュックはおもにテレビで活躍していた名子役であり、以前から目をつけていたジュニョ自身が出演をオファーした。