「未来とは、現在のすぐ先に黒々と横たわっている嵐のような時間のことだと思う。嵐の中に見え隠れする何本かのレールは地獄に向かい、何本かは吹き飛ばされて既に跡形もない。さあどうするか。」黒沢清監督はそう言い、カンヌ出品作品『回路』以来、2年ぶりの新作である本作品を完成させた。監督のオリジナル脚本による本作では、相手と判り合えないという事実を受容しながらも人々が共存している世界が、世代間の対立を交えて感動的に描かれている。本作はスタッフも俳優たちも、そのほとんどが黒沢組初参加となる。オダギリジョーは自分をもてあまし、荒々しい気持ちで日々を送る青年雄二の心の内部の成長を見事に表現し、雄二が唯一、慕う存在・守役の浅野忠信は、一見穏やかでありながら、内面に激しい怒りを抱えた青年の葛藤を、静かな悲しみをたたえたクールなまなざしとともに画面に焼き付けた。そして、黒沢監督が初めて自分よりも上の世代の人を起用したという藤竜也は、色気と野性味のある存在感に、切なさを湛えた中年過ぎの世代の思いが加味され、映画に厚みを与えている。エンディングの主題歌はこの作品のトーンを決定するものとして重要視され、多くの候補者の中から選ばれたTHE
BACK HORNが本作のために書き下ろした「未来」は映画の最年少世代の心情を鮮やかに描き出している。 |