炭鉱。それは明治以来、近代日本のエネルギーの最初の支えとなった。北海道、九州を中心に最盛期には炭坑の周りに町ができ、たくさんの人々が暮らしていた。この映画は北海道の炭坑の歴史を綴ったドキュメンタリーである。映画の撮影を始めたのは1995年。この時点で北海道の炭坑は2つにまでなってしまっていた(現在は1つ)。映画は元炭坑夫やその家族のその後を追い、進行していく。ある者はじん肺を患い、ある者は戦争で離れ離れとなった家族を探し、ある者は今後の人生の指針を見つけようとする。だが映画では誰も下を向いていない。希望を探し求めて生きていた。そして映画完成1ヶ月後、映画に出演していた渡辺松雄さんがじん肺のためこの世を去った。彼は“死の覚悟”をして撮影に協力してくれた。松雄さんは家族や主治医に手紙を残していた。その日付は8年前の誕生日、主治医宛ての手紙には医師たちへの感謝が述べられ、献体の申し出が添えられていた。撮影の何年も前からこんな覚悟をしていた彼は、にも関わらず笑顔で撮影クルーに接し、気配ってくれたという…。
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