本作のタイトル『少年の誘惑』とは少年が誰かを誘惑するのではなく、<天然の為せる技>彼自身の内部から突き上げてくるピュアな衝動に誘惑されるという意味。また、本作はその内容故に、撮影は正規の手続きを得ていず、中国本国での公開は今のところ全くの未知数という異例の作品となった。文化大革命時の北京で成長期を過ごした少年の内面を、より個人的でミニマムな視点から、とりわけ男同志の友情や性への目覚めに焦点を当てて描いている。監督はこれがデビュー作のヤン・シン。多分に監督本人の自伝的側面を撮っている。文革時代の北京を少年として過ごしてきた者なら誰もが忘れることのできない、二度と戻っては来ない天国的な日々への懐かしみと憧憬。その思いを、詩的な構成と美術畑出身ならではの流麗な映像で、鮮烈に、そして静謐に炙りだしてみせた。出演は、主役のダーシャオ役に、87年生まれの新星・李元直(リー・ユアンジー)。その親友シャーダン役に、89年生まれでテレビドラマで子役として活躍する田鴿(ティエン・ゴー)。シャーダンの姉ウェンウェン役は、中央戯劇学院出身で、『清唱静聴』『劉天華』に出演の陶蓉(タオ・ロン)が扮し、瑞々しい色気と存在感を発揮している。
|