ニノ・クヒアニチェ
シャルヴァ・イヤシヴィリ
エフゲーニ・シディチン
ピエール・リシャール
アマリア・モルドウィノワ
レヴァニ
ダヴィト・ゴギベダシヴィリ |
監督：ナナ・ジョルジャーゼ
脚本：イラークリ・クヴィリカッゼ
製作：イェンス・メウラー
オリヴァー・ダミアン
撮影：フェドン・パパマイケル
編集：ヴェセラ・マルチェフスキー
音楽：ゴラン・ブレゴヴィチ |
2000年/ドイツ・グルジア/96分/カラー/ヴィスタ/35ｍｍ/ドルビーSR
※2000年カンヌ国際映画祭＜監督週間＞正式出品
※2001年ブリュッセル国際映画祭審査委員特別賞受賞 |
―あの夏、100回のキスの約束をした。
約束を果たせなかった失われた27回のくちづけは、彼女が置いていった苦い夏の思い出とともに僕の心に甘美な傷跡を残した。―
彼女は夏休みを叔母さんの家で過すため、このグルジアの避暑地にやって来た。シビラ、14歳。ブレーキの壊れたバスに乗っていたシビラ（ニノ・クヒアニチェ）は、叔母さんのマルタが止めるのもきかずに、バスから村の広場に飛び降りてきた。そんな彼女を両腕に受け止めたのが少年ミッキーのパパ・アレクサンドルだった。ミッキーはシビラと同じ14歳。この村にやって来た赤毛の少女シビラに一目惚れしたミッキ―はシビラを抱えたパパを羨ましく思う。しかし、彼女はアレクサンドルに恋してしまう。
その頃、村では秘密上映される『エマニエル夫人』の話題でもちきりだった。村人達は誰もが鼻歌交じりに『エマニエル夫人』のテーマを口ずさみ、浮気性な人々は挑発されたかように次ぎから次ぎへと騒動を起こす。そんな村人たちは誰もがユニーク。
やがて、季節は夏から秋へと移り変わろうとしていた。ミッキ―はシビラへの、そしてシビラはアレクサンドルへの想いを止めことができない。一触即発、今にも爆発しそうな情熱の高まりはシビラの無邪気な悪戯で、イノセントな時代に永遠の別れを告げる。それはひと夏の出来事というにはあまりにも切なく、美しすぎた・・・。
グルジアの小さな村を舞台に、ユーモラスな人間描写とセックスに彩られた数々のエピソードを通して、一人の少女の恋の行方を詩情豊かに描き出したのはグルジア出身の女性監督ナナ・ジョルジャーゼ。カンヌ映画祭に出品された長編デビュー作『ロビンソナーダ』で、新人賞監督に与えられるカメラ･ドール賞を受賞。続く『シェフ・イン・ラブ』ではグルジア映画史上初のアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされるなど国際的に最も注目されているグルジア人監督の一人である。
待望の新作である本作は、“短編小説をひとまとめにしたような”いくつもの表情を持つ物語をセミドキュメンタリーのタッチのなかに詩的な美しさを描く寓話である。と同時に、一途に突き進む少女の愛は、危険と隣り合わせ―ゆえに残酷な結末をはらんでいることを鋭利に抉り出すタッチに他の女性監督とは一線を画した彼女ならではの凄みある視線を感じさせる。
また、マカロニのようにくるくると巻いた赤毛と透き通るような白い肌。イノセントな天使ともいうべきその美しい容姿の内面に小悪魔のような悪戯心が息づくヒロイン、シビラを演じるのは、オーディションで抜擢された新人ニノ・クヒアニチェ。将来の大物ぶりを予感させる彼女の熱演ぶりは要チェクである。
