『本作は、郵便配達の祖父と6才の男の子・チェンチェンの物語である。』
両親は大切な一人っ子を北京に残しての海外赴任だ。この祖父を演じる李丁(リー・ティン)とチェンチェン役の(シー・チェン)の、漫才のような掛け合いが実に楽しい。胡同(フートン=北京の古い住宅街)など北京の美しい街並を、心優しいおじいちゃんが手紙を運ぶ。自我に目覚めはじめた可愛い盛りのチェンチェンがいつも一緒だ。そして、凧の糸にくくりつけた天国への手紙遊び、二人の、男の友情にも似たユーモラスな交流がこの映画の第一の魅力である。中国では結婚しても共働きが多い。この映画のように、子供と分かれて親が海外で働く家庭も上流では珍しいことではない。一人っ子政策が続いて、都会では子供の少ない家族が普通になった。この結果、過度に甘やかされたり、同年齢の遊び相手が少なくて寂しがったり、子供たちにとって良いことばかりではない。『北京の天使』は、現代中国におけるこのような家族の問題をさりねく描いている。そしてこのことは、中国のみならず日本を含めた多くの先進国で、社会問題化してきている。こうした視点をもったことが『北京の天使』のもう一つの魅力となり、良くできたホームドラマ以上の作品として、国際映画祭での連続受賞という結果に結びついた。 |