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『華の愛 遊園驚夢』
PEONY PAVILION

配給:グルーヴコーポレーション
    ギャガ・コミュニケーションズ
http://www.groove.or.jp/movies/hana_no_ai/

キャスト スタッフ データ
宮沢りえ
ジョイ・ウォン
ダニエル・ウー
タン・マンジア
ジャオ・ジーカン
脚本・監督:ヨン・ファン
製作:アン・ホイ
撮影:ヘンリー・チュン
照明:シウ・チーミン
美術:イム・チムラム/ロウ・チョングオ
音楽:アンソニー・ロン
衣装:ワイ・シアオミン
崑曲音楽:イェー・ユンチン
2000年/中国/120分/カラー

※第23回モスクワ国際映画祭最優秀女優賞受賞(宮沢りえ)

イントロダクション
 『この作品は、欲望、名家の没落、それらにまつわる阿片と音楽、満たされることのない感情を表した映画です。そして何といっても、これは恋をする女性を描いた映画です。』
  ヨン・ファン監督はそう語る。いにしえの水の都、蘇州を舞台に滅びゆく貴族文化と押しよせる時代の波に翻弄される二人の女性の絆の物語を、崑劇の名曲『遊園驚夢』に乗せて色彩豊かに華麗な映像美で織り上げられたのが本作である。監督・脚本のヨン・ファンは欧米で芸術を学び、ファッション写真家として「ハーパース・バザー」「Vogue」等で活躍、4冊の写真集を出版し、84年から映画監督としても活動を開始、とりわけフランスからは97年芸術文化勲章が与えられた。またヨン・ファンの『美少年の恋』でデビューしたダニエル・ウーが二人の女性の関係をかき乱す魅力的なキャラクターで登場している。少女のあどけなさと、男性を魅了する二面性を持つ主人公の歌姫ジェイドをデリケートにかつ伸びやかに演じたのが宮沢りえ。かたや男装の麗人として登場し、宮沢演じるジェイドと全く対極の女性を演じたのが香港映画界のみならず、日本のCMでもおなじみのジョイ・ウォン。ブランクを全く感じさせない本格的映画復帰作である。

ストーリー
 『美しい庭園で知られる水の都、中国蘇州。 華麗な貴族文化が華やかりし1930年頃。
欧州に端を発した戦雲はアジアにも暗い影を落としその中で没落する貴族もあった・・。』

 折りしも銅鑼の音が響き渡り牡丹亭「遊園驚夢」を歌う黒いチャイナドレスに身を包む美しい女性ジェイド(宮沢りえ)がいた。その歌声に呼応するかのように自らの歌声を重ねるのは、タキシードを颯爽と着こなし黒髪をなでつけた男装の麗人ラン(ジョイ・ウォン)である。色とりどりの衣装を思いおもいに身にまとい多勢の崑劇の歌手たちが名家ロン家の贅を尽くした庭園で舞い踊る。玉虫色のシャボン玉に包まれ降りしきる美しい花びらが今宵の主人公ジェイドの誕生会をいっそう華やかにする。ロン家の長の恒例の祝辞を、一族のもの、その夫人たち、さらに執事らが饗応する豪華な屋敷内を、どこか阿片の甘い香りが妖しく立ち込めていた。
  昨夜の夜会のもう一人の主役ランは報国の志を持つ自立した女性だった。普段は国民学校で英語を教える進歩的な女性で、彼女もかつては名家の出身である。そんなランも従兄の第5夫人として嫁いで来た可憐な女性ジェイドに何故か心惹かれ、また彼女の子供パールの面倒もよく見るのだった。しかし彼女にはジェイド母娘の悲しみはみじんも映らなかった。崑劇歌劇団の歌手として得月楼で大勢の観客を魅了した彼女の美しい歌声も、このだだっ広い貴族屋敷の中では、誰に聞かせるというのだろう。それゆえ名曲を互いに歌えるランの存在は彼女にとっていつしかかけがえのないものになっていた。
 籠に入った毛並みのいいオウムでさえ、ジェイドには自らをなぞらえる悲しいものに映る。美しい刺繍の手を途中で止め、切り裂いてしまうほどであった。他の夫人同士との皮肉なやりとりもジェイドにはやり切れないものがあった。そんな折り、執事イー(ジャウ・ジーカン)の心遣いは彼女をなごませた。夜更けて綴る彼の日記には何が書かれているのか。ともあれ、多勢の人間が生活するロン家の中で、ただ一人執事の彼女への計らいは慈愛に満ちたものだった。
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