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今夜はディカプリオがアカデミー賞の主演男優賞にノミネートされている「ウルフ・オヴ・ウォールストリート」の完成披露試写会。開場の1時間10分前に到着し珍しく一番で待つ。
それほど観たかったこの作品。M・スコセッシとディカプリオのコラボがようやくオスカーに手が届きそうなのだ。
本作にも冒頭で顔を出しているマシュー・マコノヒーが「ダラス・バイヤーズ・クラブ」で最優秀主演男優賞を取るだろうと思ったが、作品の時間が長い分、ディカプリオに軍配が上がるかもしれない。
子どもの頃から修練を積んで、ここまで頑張ったのだから取らせてあげたいという親心もアカデミー賞会員に芽生えるのではないだろうか。
彼がふんするのはウォール街の伝説の男、ジョーダン・ベルフォード。26歳で年収49億円を稼ぎ出し不正行為でのしあがって転落した株式ブローカーだ。
野心満々で頭の回転が速く弁が立つ、まさにアメリカンドリームの覇者だが、これこそディカプリオが待っていた正真正銘のはまり役。水を得た魚のように ジョーダンの人生を生き、楽しみながら演じているのがわかる。
すべてはお金のために。金儲けこそ人生の歓び。豪邸に高級車、ヨットに馬、ドラッグ、セックスし放題。
右から左に他人の欲を利用して得たお金を乱用する、下品な男たちのランチキ騒ぎを眺めつつ、似たり寄ったりのバブル時代の日本人を思い浮かべて、軽重浮薄の哀れさに苦笑いする。さらに客観視すれば、現代アメリカに根強くはびこる懲りない金銭感覚への警鐘とも受け取れる。欲に目がくらみ成り上がり、栄華を極めて没落するのは神の采配と納得するが、ジョーダンの短絡的な行動は、あまりに素直でわかりやすく、悪事を働いても憎めない。
幼稚で狡猾という、なんとも不愉快で目が離せない彼の魅力を、ディカプリオは体現して惹き付ける。
会社の相棒役ジョナ・ヒルのハチャメチャな体当たり演技にも目を奪われる。コメディとブラックユーモアを行き交うジョナが、いきなりシリアスに迫る終盤、その才能にようやく気づく。彼も助演男優賞でオスカーを手にするかもしれない。
テンポの良さを感じさせるキャメラワークとカット割り、ゴージャスな背景を印象づけるロケーションもいい。そして讃えるべきは、何百人もの社員にふんした役者たち。台詞のない者や1秒以下しか映らない者も、キャラクターを身に付け、みごとに存在感を出している。
(日本映画の気のないエキストラとは大違いだ)
その気迫がすべてのシーンのテンションを高め、決して相容れない世界と否定する観客をも大いに興奮させる。こういうモブシーンを作れるのは、ディカプリオのカリスマ性と、スコセッシ監督の信頼性のなせる技。すばらしいの一語に尽きる。
<合木こずえ>