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ラッセ・ハルストレム監督の新作「セルフ ヘイブン」はニコラス・スパークス原作の、大人の女性たちをときめかせる佳作。
なぜ秀作と言い切れないのか。それは、ヒロインと恋に落ちる善良な男が、最も肝心なところでらしからぬ言動を発したからだ。
出会ってときめき、3歩進んで2歩下がり、少しずつ相手の人間性を理解して、恋から愛へと心が満たされる、その過程がとても丁寧に映し出されて、われわれは、二人の関係が進展するのを見守ってきたのに......。
クライマックスにさしかかる大事な心理描写で、それまで築いてきた男の魅力を覆すようなセリフにかなり戸惑う。
この人ならそんな発言はしないだろう、という違和感は、集中力を中断させる。さらに数時間後、前言撤回。とたんに絆を深めたかのように見せる演出は、恋愛経験の浅い子どもには通用しても、百戦錬磨の大人の女は納得しない。
しかし、心残りなのはそこだけで、実は最初から最後まで胸の高鳴りを意識しながら見入っていたのである。
何らかの事件から逃げてきたらしいヒロインは、長距離バスで移動中、休憩所になっている町に逗留しようと決める。バスの乗客に食品や雑貨を売る小さなスーパーのオーナーは、どうも彼女に一目惚れしたらしい。
二年前に妻を病で亡くした彼は、ようやく前向きに生きようと思い始めたばかり。二人の幼い子どもたちは、そんな彼の気持ちを察したのか、明るいヒロインにすぐなつく。
ヒロインは何から逃げてきたのか。その謎は、経験者なら前半で解いてしまうが、たいていの女性は後半まで頭の隅で推理力を働かせることになる。
ヒロインを演じているのは「バーレスク」や「ロック・オブ・エイジズ」で新鮮な印象を残したジュリアン・ハフ。彼女の落ち着いた物腰と聖母のような微笑みに瞬く間に魅せられて、どんな過去があろうときっと彼女は正しいはずだと思わせてしまう。この好感度は素晴らしい魅力だ。
相手役のジョシュ・デュアメルも笑顔がステキなナイスガイ。優しさと思いやりと、他人の心を気遣う繊細な神経の持ち主であることが、その笑みだけでわかる。安心感をもたらす微笑みは、男の最大の武器だ。鍛え上げた肉体と長い手足、艶やかな髪と長い指にも惹かれる。男手ひとつで幼い子供たちを必死に育てている様も、母性本能をくすぐって、もうドキドキが止まらない。
過去に辛い経験をした女性たちに、勇気と希望を与える力強いラヴ・ストーリー。
<合木こずえ>